凍結処理で骨のがんを治療
がん細胞を死滅させ再利用
関節機能の維持可能に

 がんに侵された骨を取り出し、液体窒素で凍結処理してがん細胞を死滅させた後、元の場所に戻し再利用する方法を金沢大病院整形外科の土屋弘行(つちや・ひろゆき)助教授らのグループが開発した。人工関節を使う従来の方法より簡単で生体適合性が良く、感染にも強いなど多くの利点がある。既に高度先進医療にもなっており、長期的な成績が確認されれば、骨肉腫などの骨のがん、骨腫瘍(しゅよう)の治療で有用な選択肢になりそうだ。

 マイナス196度

  以前は病巣のある手足を切断しなければならないことが多かったが、化学療法などの進歩で骨の切除にとどめ、切断を回避することも可能になってきた。
 ただ、腫瘍はひざや骨盤などの関節の近くにできることが多いため、骨を切除した後には人工関節を使い再建を図ることが多いが、金属製のため感染に弱く、腱(けん)や靱帯(じんたい)がつかず、元通りの関節機能の再現は難しかった。
 骨のがん細胞を高温で処理し、戻す方法が行われたこともあった。しかし、骨に付いているタンパク質なども熱で変性するため、骨や血管の再生が悪く、感染や骨折などの合併症が多かった。
 このため土屋助教授らは、セ氏零下196度の液体窒素でがん細胞を死滅させる方法に着目、骨腫瘍(しゅよう)への応用を試みた。
 液体窒素は細胞の凍結保存にも使われる。がん細胞も死なないのでは、との疑問も浮かぶが「普通の細胞は液体窒素で百パーセント死滅する」と土屋助教授。凍結保存の際は特殊な保護材を使うため細胞は死なないが、液体窒素に直接浸すと、凍結時と融解時に細胞が壊れるという。

 ▽20分浸すだけ

 骨がもろくなっていると再建に使えないこともあるが、切除した骨に十分な強度があれば、がんが原発性でも転移性でも適用可能。形状が複雑で、関節機能の再建が難しい骨盤にがんがある場合などは、この方法が特に適しているという。
 手術はまず骨を切り出し、病巣や再建に不要な組織を取り除く。凍結する際、氷の膨張で骨が割れるのを防ぐため、水分もできるだけ除く。
 凍結処理は簡単で、液体窒素を入れた容器に切り出した骨を入れるだけ。約20分間浸した後、室温で15分かけて融解。さらに蒸留水や生理食塩水に約10分間浸して常温に戻す。
 後は骨を元の場所に戻して固定すれば終了。人工関節などと違い、形はぴったり合う。特殊な技術も不要だ。

 ▽機能維持は良好

 骨を切り出すには両側2カ所を切断する必要があるが、手術は切る個所が少ないほど術後の回復が早い。このため土屋助教授らは、関節の近くに腫瘍がある場合、関節から遠い側だけを切断し、骨を体につないだまま体外に出して液体窒素に浸す方法もとる。
 この方法なら関節を切り離さないため靱帯を縫合する必要がない。術後の関節の安定性が高く、曲げ伸ばしなどの機能が良く保たれるという。
 1999年から今年7月までに7―73歳の37人に実施。骨肉腫が最多の16人で、結腸がん、乳がんなどからの転移がんも6人いた。合併症は感染が3人、骨折が2人だけで、29人は術後も手足の機能が良く保たれていたという。
 土屋助教授は「ひざの場合、人工関節は高額だが、この方法の材料費は安い液体窒素代だけ。特殊な器材も不要で、ほかの施設でも簡単に行えるだろう」と話している。


ヘッドラインへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2005 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved