胸焼けしても病変なし
非びらん性胃食道逆流症
胃酸抑制剤、半数に効果

 胸焼けしたり胃酸が込み上げたりする逆流性食道炎の患者は、食道がただれている。しかし、症状は同じなのに病変が見つからない「非びらん性胃食道逆流症」(NERD)があることが分かってきた。症状がある人の60―70%がNERDで、逆流性食道炎の30―40%より多いとのデータもあり、専門医は「病気の認知度が低く、間違った診療がされかねない」と理解を呼び掛けている。


  ▽肥満や老化で
 逆流性食道炎は、胃から上がってきた胃酸が食道の下部に長くとどまって起きる。肥満で胃に脂肪がたまったり、年を取って食道と胃の間を締める筋肉が弱ったりするとなりやすい。脂っこい物をよく食べ、大食いをする人にも、胃酸が増えるなどして起きやすい。
 さらに、糖尿病による胃や食道の障害や、骨粗しょう症で腰が曲がることが原因の症例もあるという。
 症状は胸の痛みや慢性のせき、のどの異常などで、不快感に伴う寝不足が見られることもある。
 患者は年々増えているといい、その背景を木下芳一島根大教授(消化器・肝臓内科学)は「食生活の欧米化と高齢化が進んだのに加え、日本人のピロリ菌感染が減り胃粘膜の委縮が起こりにくくなったことで酸の分泌が良くなったため」と分析する。
 逆流性食道炎では高濃度の胃酸により食道(成人で約20㌢)の下部が傷み、びらんやかいようができる。反対に、内視鏡ではっきりした病変が観察されないのがNERDだ。
 

▽食道上部に到達

このため、NERDの診断には自覚症状が重要で「週に2回以上、胸焼けや胃酸の込み上げがあり、普段の生活に支障を来している」ことが目安となる。

 NERD患者の3分の2は胃酸の逆流が原因とされる。これ以外に考えられているのは、十二指腸の内容物や、甘い物など浸透圧性が高い食べ物の胃から食道への逆流。ほかにアルコールによる食道粘膜の損傷や、知覚神経系の異常、うつ状態も挙げられているが、詳しくは分かっていない。
 なぜ、びらんなどの病変が出ないのか。逆流するタイプでは「胃酸は口の方の食道上部まで達し、下部には長く停滞しないため」と木下教授はみる。そして「上部まで来る胃酸は低濃度だが、食道上部は感受性が高いので、強い胸焼けを感じるのだろう」。上部まで到達する理由は、食道の運動がうまく制御されないことなどが考えられるという。

 

▽見えない病気
「タケプロン」(一般名ランソプラゾール)がNERDでも保険で使えるようになった。
 ただ、約140人を対象にした臨床試験で4週間後の胸焼けの改善状況を調べたところ、効果があったのは2人に1人にとどまった。
 効きやすいのは、胃酸が発症に関係しており、小太り、40歳以上の中高年、食道下部が緩みやすい食道裂孔ヘルニアがあるなどの患者。副作用は1―2%で、肝機能の異常や下痢、頭痛などという。
 木下教授は「病変が見つからないことで、胃炎などほかの病気と間違われて不要な薬が処方されたり、気のせいだと言われたりしかねない。おなかの病気は内視鏡や超音波検査で見えたが、NERDは『見えない現代病』と言える」と話している。




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