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大腿(だいたい)骨と骨盤をつなぐ関節が変形し、最後は歩けなくなる変形性股(こ)関節症。最終的な治療法となる人工股関節手術では近年、患者の負担が少ない極小侵襲手術(MIS)が広がっているが、さらに「カーナビ」でおなじみのナビゲーションシステムを組み合わせた新手法が登場した。これにより重症患者へのMIS適用も可能になるという。
▽小さな傷
股関節は「臼蓋(きゅうがい)」と呼ばれる骨盤の受け皿に、大腿骨の先端にあるボール状の骨頭がはまっている。患者の大半は、先天性の股関節脱臼や、骨頭が外れないよう押さえる臼蓋上部の張り出しの形成不全が原因で発症する。
股関節に無理な力がかかってクッションの軟骨が擦り減り、変形してしまうためで、主に中年期以降の女性に多い。
人工関節手術は1960年代に英国で開発された。ただ、太ももを長さ20センチも切開するため、2カ月の入院が必要で、手術に踏み切れない人が多かった。
これに対し、2000年ごろから普及しだしたMISは切開幅7ンチ程度。入院は最大でも2週間で、米国では日帰り手術もしているほど。リハビリを早く開始でき、回復も早く、傷が目立たない美容上の利点もある。
ただ、切開部が小さいため手探りの作業が多くなる。手術には熟練を要する上、股関節の変形が進んだ重症患者には適用できなかった。
▽ハイテク手術
これを解決したのが、ミサイルの目標探知という軍事技術を応用したナビゲーションシステム。
手術の前に股関節の正確なCT写真を撮影。それを基に、どのように人工股関節を埋め込むかの〝設計図〟を作る。
ドリルなどの手術道具には小さな銀色の球が3つ、3角形を成すように付いている。その反射光を赤外線カメラが拾い、位置を特定する。
その情報は、コンピューター画面の設計図の上に重ねるように映し出され、執刀医はそれを見ながら、取り付ける人工股関節の角度を正確に調節できる。「あと何ミリ削る必要があるか」も表示されるハイテクぶりだ。
臼蓋の代わりとなるカップの埋め込みには、特に正確な位置決めが必要。だが関節の変形が激しいと位置決めは難しく、この作業が手探りとなるMISは使えなかったが、ナビを組み合わせれば可能になる。
昨年8月から導入しているNTT東日本札幌病院の石部基実(いしべ・もとみ)整形外科部長は「股関節の交換自体は1時間15分程度で終わります」と話す。
▽患者は全国から
同病院では、1昨年6月から昨年8月までに実施した人工股関節手術66例のうち、53例はMISを実施できたが、13例は従来型の手術だった。しかしナビ導入後、今年5月までの99例のうち、実に93例がMISだった。
この手術は、やはり股関節が変形する関節リウマチや大腿骨頭壊死(えし)にも適用可能。ただ装置一式が高価なことなどで、国内ではほとんど普及していない。石部部長の下には関西からも患者が訪れ、現在は手術まで4カ月待ちの状態だという。
それでも「こういう方法があることを知らず、手術をあきらめて痛みに耐えている人がまだいるはず」と石部部長。
8月3日には札幌市で、変形性股関節症を克服した歌手のダ・カーポをゲストに、この手術法を紹介する一般向けのセミナーを開催するなど、普及活動を続けている。
石部部長はホームページ(http://www.dr-ishibe.net)を開設、相談も受け付けている。
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