補助人工心臓で治験進む
埋め込み型、東大などで
 重い心臓病の患者が移植を待つ間に使う、体内埋め込み型補助人工心臓の臨床試験が東京大などで進んでいる。患者の行動制限が少なくて済み、退院して通常の生活を送れるようになるなど良好な成績を収めている。
 補助人工心臓は、心臓の動きを助けるポンプを体外に置く従来型の場合、小さな冷蔵庫ほどの大きさがあり、重さも100キロを超えるという。
 医療機器メーカーのテルモ(東京)が開発した今回の補助人工心臓は、体内に埋め込む小型ポンプと、肩から掛けるバッテリーやコントローラーで構成。「従来型では行動範囲はせいぜい数メートルだが、埋め込み型なら全く違う世界が開ける。会社に勤めている患者もいる」と、東大の許俊鋭・特任教授。
 埋め込み型にもさまざまなタイプがあり、ポンプ機能が低下した心臓を助けるため、羽根車を回し全身に血液を送り出すものが多い。
 しかし羽根車の軸の付け根で血液の流れが悪くなり、血栓ができやすくなったり、回転の摩擦により赤血球の細胞膜が破れて溶血したりする難点があった。許教授は「血栓が脳の血管に回ると、脳梗塞を起こし非常に危険だ」と指摘する。
 テルモ製の最大の特徴は構造だ。同社は京都大やNTN(大阪市)などと共同で、電磁石で羽根車を浮かせたまま回転させるポンプを開発。軸の付け根をなくし、血栓や溶血の問題を一気に解決した。
 欧州での臨床試験を経て、国内でも東大、東北大、大阪大、九州大で計6人(2009年5月中旬時点)に臨床試験を実施。全員が一つの目安となる6カ月を過ぎても異常はない。許教授は「移植までの待機期間が平均2年以上になる日本では耐久性も必要だが、現時点では順調だ」と話す。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓移植を希望する国内の登録者は4月末時点で130人あまり。しかし移植を受けるには60歳未満が望ましいとされているため高齢を理由に登録しない患者も多い。日本移植学会は実際の移植適応者を最大で600人程度とみている。
 許教授は補助人工心臓の役割について、従来の「移植までのつなぎ」の役割に加え「移植が望めない患者の生活向上」としても有用だと考えている。「現状では、埋め込み型を使う患者は全体の4分の1にすぎない。多くの人に、自由に出歩ける生活を取り戻してあげたい」と話している。 (2009/06/02)

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