わが子に障害、受容を支援
同じ経験持つ母親を紹介
出産直後の不安和らげ
   発達の遅れを伴うダウン症や、唇や上あごに裂け目ができる口唇・口蓋裂などの赤ちゃんを母親が受け入れ、愛情をはぐくめるよう支援する取り組みを、北九州市立総合療育センターの武田康男医師らが続けている。出産直後の不安を和らげるため、同じ病気や障害がある子供を育てる母親を紹介、悩み相談に乗る「ピアカウンセリング」も活用、学会で発表するなど注目されている。
 
▽まず祝福を
 小児歯科が専門の武田医師は、口唇・口蓋裂の子供の治療に携わる中で親への早期支援の必要性を感じ、約25年前に出産直後の母子への訪問診療を始めた。
 周産期医療の現場では子供の障害に関する専門的な医療情報は提供されても、日常的な子育てに関する情報は十分得られないケースが少なくないという。「親が一番支えを必要とするのはわが子に初めて出会い、未来が描けず不安と孤独を感じている出産直後なんです」と武田医師。
 連携する地域の産科医や小児科医から連絡を受けると、その日のうちに言語聴覚士らと母親の病室を訪ね、哺乳指導や、成長に応じて必要になる医療的ケアについて説明する。まず最初に、赤ちゃんの誕生を祝福することが大切だ。
 だが、活動を始めてしばらくして、医師と親の立場の違いという〝壁〟に直面した。親同士ならもっと本音をぶつけたり、共感したりできるのでは。それまでの訪問診療で知り合った母親の何人かに声を掛け、「一緒にサポートしてほしい」と頼むようになった。
 
▽「大丈夫よ」
 ピアカウンセリングとは、病気や障害の当事者同士が「仲間」として気持ちを受け止めたり、悩みの相談に乗ったりする手法だ。現在、10人ほどの母親が参加し、赤ちゃんの出生後から母子にかかわっている。
 北九州市門司区の中岡恭子さん(43)は、2004年に出産した天希直君(4)がダウン症と分かった時、武田医師の紹介でほかのお母さんの訪問を受けた。同じダウン症の法子ちゃんという5、6歳の女の子も一緒に来てくれた。
 すやすやと眠る天希直君の姿に、法子ちゃんが人さし指を唇に当て「静かにね、静かにね」と話すしぐさがかわいかった。こんなふうに育つんだと実感した。お母さんは落ち着いた感じの人で、言葉にしなくても「元気を出して、大丈夫よ」という思いが伝わってきた。
 恭子さん自身がピアカウンセリングにかかわるようになったのは出産の翌年。これまで16人の母親を訪ねた。気持ちを受け止め、心配ごとに耳を傾ける。天希直君も連れて行き、心臓手術など大変だったことも含めて育児の喜びを話す。
 訪問は30分から1時間ほど。その後もメールや電話で連絡が来たり、自宅に集まったりと交流が続くことも多い。「親がニコニコと笑っていれば、子供もニコニコできる。仲間がいれば1人で悩まずに済むんです」
 
▽子育てに希望
 昨年10月に札幌市であった日本未熟児新生児学会で武田医師は、ピアカウンセリングを受けた親102人のアンケート結果として「安心感や(障害への)肯定を得た」(32人)、「孤独から解放された」(26人)、「未来や目標ができた」(15人)などの声を紹介した。
 「子供の病気や障害を『なかったこと』にはできない。そのことを出発点に、子供自身がほかの誰でもない人生を歩んでいけるよう希望を持って子育てしてほしい」。武田医師の思いだ。(共同通信 若林久展) (2009/04/21)

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