森亨結核研究所名誉所長 |
財団法人結核予防会結核研究所の森亨名誉所長に、結核対策の現状や課題について聞いた。
―「結核は終わった」という雰囲気があるが。「昔に比べ患者は少なくなったが『終わった』というのは錯覚だ。国内でも感染症の中では患者、死者とも断然多い。医療関係者にも誤解している人が多く、医学教育でも軽んじられている」 ―先進国の中でも日本の罹患率が高いが。 「今の日本は1960年代の米国と同じレベルで、対策は40年遅れている。戦中、終戦直後のまん延時代に感染した人たちが高齢化し、罹患率、死亡率が高くなっている」 「時間がたてば患者数は減少するとみられるが、油断してはいけない。例えば米国では、新たな薬剤が開発され結核は消えていくとみられていた。療養所を閉鎖し、検診もやめ対策の予算も減らした。ところが80年代後半から患者数が増え大慌てした。対策をサボっている間に社会的、経済的な弱者に結核が潜り込んでいたのだ。日本も今、対策を怠ると米国のようになる恐れがある」 ―今の日本の問題は。 「東京など首都圏に(高リスクの)生活困窮者が集まり、患者が増えていることだ。外国人の割合も今後増えるだろう。米国では患者の6割、欧州でも5―8割が外国人だ。日本は3%程度だが、日本人患者が多いので薄まっているだけ。20代では20%が外国人だ」 「隣国からの患者が多い米国では、国内より隣国の対策に取り組んだ方が効率的だという声があるほどだ。結核対策には世界が一丸となって取り組まねばならない」 ―複数の薬に耐性を持つ菌が問題になっているが。 「日本の結核治療は無秩序で行き当たりばったりだ。結核には治療が簡単なものと難しいものとがある。再発など難しい結核を技術の未熟な医師が治療すると、耐性菌が発生してしまう。専門病院で治療するべきだ。菌検査の精度管理もうまくいっていない。効果のある薬を正確に選択するための感受性検査が難しいという問題もある」 ―展望は。 「抗結核薬はリファンピシンの登場から40年経ても新たなものがなかった。近年、日米の製薬会社が開発を進めており、近い将来、新薬が登場すると思うが、一剤だけでは耐性菌が出現する。効果的な薬が複数開発されることが望まれる」 (2009/04/14) +FONT> |