加齢黄斑変性の視力改善
新薬の注射液が発売
患者支援の国際団体も活動
 目の網膜にあり、物の細かい部分や色を見分ける中心視力を担う黄斑部に障害が起きる加齢黄斑変性症(AMD)の患者用に、視力の改善が確認された新薬の注射液が発売された。
 AMDは欧米では中高年の失明の主因。患者の増加は国内でも指摘されているが認知度は低く、啓発と患者支援を世界規模で行う団体が日本支部を開設し活動を始めた。
 
▽光線力学的療法
 AMDは、網膜の外側にある脈絡膜から新しい血管が黄斑部に生え出血などを起こす「滲出型」と、血管は生えないが黄斑部が徐々に傷む「萎縮型」に大別される。視力障害が強く、数カ月で失明する場合もある滲出型の治療が大きな課題。
 飯田知弘・福島県立医大教授(眼科学)によると、以前は新生血管をレーザーで焼き固め、網膜への侵入を防ぐ治療が主体だったが、黄斑部の中でも最も重要なところに新生血管があると、この方法は使えない。
 その後、新生血管に多く集まる光感受性物質を事前に点滴し、弱いレーザーを照射する「光線力学的療法」が開発され、視力低下を抑える効果も確認されたことから、治療の中心となっていた。
 
▽低下はゼロ
 新たに発売された薬は、血管新生の発生に関与するタンパク質VEGFの働きを抑える「ルセンティス」(一般名ラニビズマブ)。白目から眼球の中心の硝子体に向け、最初の3カ月は月に1度、その後は症状に応じ1カ月以上間を空けながら注射する。
 メーカーによると、患者約40人を対象にした国内の臨床試験では、投与半年後、1年後のいずれでも全員が視力を維持。視力変化を調べる特殊な検査表で、見える文字の数が半年後に平均約9個、1年後には同約11個、それぞれ増えた。
 「AMD患者で視力が上がるというのは、これまで考えられなかった。光線力学的療法の対象は視力0・1から0・6くらいの人だったが、新しい治療はより早期や重症の人にも可能になるのではないか」と飯田さん。
 臨床試験に参加した男性は「直線のものがゆがんで波のように見えたり、4、5メートルまで近づかないと人の区別もつかなかったりしたが、今では生活上、ほとんど不自由はない。治療を受けなかったら半ば失明だったろう」と話す。
 VEGFの働きを抑える注射薬にはほかに「マクジェン」(ペガプタニブナトリウム)があり、視力低下を抑制することが確認されている。
 
▽日本にも団体を
 日本でも、AMDは視覚障害の原因で第4位。2007年には50歳以上の1%強が滲出型という研究もあるが、今年はじめの意識調査では50―70代の認知度は31%で、緑内障や白内障に比べ大きく下回っていた。
 こうした中、都内に日本オフィスを開設したのは「AMDアライアンス・インターナショナル」(本部カナダ)。20カ国以上で計約60の視覚障害者団体、研究機関などが加盟している。
 「治療が可能になってきたのに失明してしまう人がいるのは残念なこと。早期発見の重要性を訴えるとともに、病気や治療、リハビリに関する知識も持ってもらいたい」と、本部担当者。
 欧州4カ国の調査では、AMD患者の約7割は精神的ショックで何らかの抑うつ状態にもなったといい、こうしたケースでの支援も重要だとしている。日本担当の神谷和子さんは「将来、国内にも患者団体ができるのをお手伝いしていければ」と話している。日本支部の連絡先は03(5706)6831。(共同通信 江頭建彦) (2009/03/31)

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