「手術部位感染」低減を
入院延びコストも増大
 開腹、開胸といった外科手術後に、傷口などが細菌に感染して起きる「手術部位感染(SSI)」。入院期間が延び患者の満足度が低下するほか、医療コストも増加するなどさまざまな問題を引き起こし、リスクの低減は重要課題だ。
 感染症は通常、原因となる病原体の毒性の強さなどと、患者の状態とのバランスによって発症する。手術後に発症しやすいのは「手術で生体の正常な防御システムが壊れ、腹部などにある常在菌による汚染も加わるため」と、日本外科感染症学会理事長の炭山嘉伸東邦大名誉教授は解説する。
 「消化管にはブドウ球菌や腸球菌、大腸菌などが常在する。これが手術時には感染症の原因にもなってしまう」と炭山さん。国内のある調査では、SSIによる入院日数の増加は結腸の切除で平均約15日、直腸切除で同約18日で、医療費も75万―89万円増えたという。
 菌だけでなく、持病や栄養・免疫機能の状態など患者の要因も影響する。さらに手術に使うガーゼや縫合糸、患者の管理に使うカテーテル、治療薬など医療側の要因も大きいという。  対策のひとつとして炭山さんが注目するのが最近、国内でも承認された抗菌縫合糸だ。
 縫合糸は血管などをつなぎ合わせたり、切開部分を閉じたりするのに使うが、体内では異物で、細菌増殖の“足場”となり得る。
 リスクを減らすため、手術後1―2カ月で体内に吸収される糸も普及しているが、新製品は医薬部外品の抗菌物質トリクロサンを吸収糸に塗布した。これがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など、SSIの原因となる細菌の増殖を抑制する。
 海外の研究ではSSI発生率が心臓血管外科の手術でゼロ、消化器外科の開腹手術で従来の吸収糸の半分以下だったとのデータがあるという。
 価格は従来の吸収糸より1割ほど上がるが、炭山さんは「SSIが防げれば全体のコストは下がる。手術部位など必要性に応じ従来の糸と使い分けるのがいいだろう」と話している。 (2009/03/24)

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