目標は「世界の医療拠点」
タイ、国内では格差も

   海外からの患者誘致を経営の柱に据えるタイの民間病院は、バンコクだけで約20施設。タイ政府は各国からより多くの患者を呼び込もうと、健康関連産業を積極的に支援するなど、観光と医療の両立を目指した取り組みを進めている。
 タイ保健省健康サービスシステム開発局幹部のチャンビット・タラテープ医師は「世界の医療ハブ(拠点)としての地位を確立したい」と意気込む。  保健省によると、2001年にタクシン政権が発足して以降、政府はスパやマッサージなど健康産業にかかわる人材育成や、ハーブ製品の生産拡充に力を入れてきた。
 「治療の傍ら、観光地としての魅力を楽しめるイメージが定着した」(保健省)こともあり、タイの病院で受診した外国人患者は03年の約70万人から、07年には約150万人にまで急増している。
 政府がライバル視するのは、インドやシンガポールなどアジアの国々だ。チャンビット医師は「特にインドは米国帰りの医師が多く医療水準が高い。欧米に比べ格段に安い医療費も武器になっている」と警戒する。
 一方で、これらの民間病院は医療費を自由に設定し、公的医療保険は一切使えない。「料金が安いといっても先進国と比べての話。タイの一般国民にとっては高額で、診療を受けることはまず無理」(在タイ日本大使館)。
 タイ政府は02年、低所得者層の救済などを目的に、1回あたり30バーツ(導入当時のレートで約90円)で診療を受けられる新たな医療保険制度を導入。現在は無料となっているが、多くの民間病院はこの保険の適用を認めず、公立病院に外来患者が殺到している。
 診察までの待ち時間が大幅に増える一方、収入が減った病院側が難しい治療を拒んだり、医師が民間病院に流出したりする事態も相次ぐ。
 日本大使館関係者は「高度な医療を提供できる施設はタイ国内でもごく一部。医療格差は拡大している」と指摘。チャンビット医師も「公立病院の質を底上げする必要はあるが、課題は多い」と明かした。 (2009/02/10)

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