かかりつけ医普及の思いで 進まない移行、制度整わず |
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往診で子どもの自宅を訪れると、満面の笑みで「やっほー」と呼び掛ける。前田浩利医師(46)が、在宅医療を中心とする「あおぞら診療所」を千葉県松戸市内で始めたのは1999年。 「地域に根差した『かかりつけ医』を積極的に普及させたい」との思いからだった。東京医科歯科大の同級生だった和田忠志理事長、川越正平医師らとともに預貯金をかき集め、開設にこぎつけた。
現在、同診療所は松戸市内の2施設に、医師14人と看護師18人など計約60人のスタッフを抱える。この態勢で約530人の在宅患者を24時間体制で支え、外来も行う。このうち、脳性まひや筋ジストロフィー、小児がんなど、さまざまな病気と闘っている約65人の子どもたちを担当するのが、前田医師ら3人の小児科医。患者は松戸市内だけでなく、10キロ以上離れた船橋市などにも多くいるため、地域の訪問看護ステーションと密に連携している。 以前は病院勤務だった看護師の後藤正子・副主任は、診療所で働き始めて約8年。「子どもが入院するとお母さんは付き添いやお見舞いの毎日になり、家族がばらばらになる。在宅にすれば家族がまとまり、子どもたちの顔つきが病院にいた時とは全然違った」と話す。 だが、在宅医療への移行はなかなか進まない。日本小児科学会倫理委員会が2007年、全国の8府県で行った20歳未満の超重症心身障害児に関する調査によると、救急治療の後、そのまま長期入院を続ける超重症児は全体の約15%。このうち約70%は退院できる状態なのに、「自宅で医療的ケアができない」などの理由で病院にとどまらざるを得ないという。 「病院の小児科医が在宅医療を理解し、『この子を家に帰してあげよう』と積極的に思ってくれなければ」と前田医師。 介護保険が整備された高齢者と違い、在宅を支える制度の基盤が整っていないことや、小児をケアする訪問看護ステーションが不足していることも普及が遅れる原因だという。 運営事情も厳しい。往診の車中で前田医師は「人工呼吸器など高度な管理が必要な患者を診るほど、経営は苦しくなるのが現在の制度。比較的症状の軽い人をたくさん診れば収入は増えるが、広範囲に住むため往診件数は限られ、人件費や車の維持費などを差し引くと足が出てしまう」と話した。笑顔は消えていた。 (2009/01/27) +FONT> |