アメーバ角膜炎に注意を
コンタクトの不適切使用で
対策強化を訴え
 単細胞の原生動物アカントアメーバに感染して起きる角膜炎が増加している。初期に適切な治療をしないと、視力が大幅に低下したり失明したりするケースもある。原因の大半はコンタクトレンズの不適切な使用に関係しているといい、専門家は対策の強化を求めている。
 
▽傷から
 アカントアメーバは、淡水や土壌にすむ単細胞生物。人に対する病原性はないとされてきたが、1970年代以降、角膜炎を起こすことが知られるようになった。
 「健常な角膜にはアメーバは侵入できないが、コンタクトの使用や目の外傷で角膜が傷つくと、そこから感染する」と話すのは、88年に国内初の症例を報告した加藤医院吉原分院(静岡県富士市)の石橋康久院長だ。
 患者の男性は、コンタクトをしたまま寝てしまった翌日から充血や異物感を訴え、数カ所の病院で治療を受けたが改善せず、当時石橋さんがいた大学病院を受診。留学した米国でアカントアメーバ角膜炎の症例を経験していた石橋さんはこの病気を疑った。眼痛や視力低下が激しかったが、治療で回復した。
 その後も、一般的な抗生物質や抗ウイルス薬が効かず病院を転々とする患者を多く診てきた。1日、2週間などコンタクトの装用期間を超えた使用のほか、装脱着時に角膜を傷つけたり、消毒を怠ったりした人が多いという。
 
▽失明も
 石橋さんによると、角膜炎の「初期」は1―3カ月続き、角膜の中央に向かう神経に沿った「放射状角膜神経炎」が多くのケースで見られるのが特徴だが、この段階で発見できないと、アメーバが角膜の中央に集まる「移行期」に入り、充血や痛みが増す。
 さらに1―2週間経過すると「完成期」となって角膜中央に円板状の混濁などが見られるようになり、角膜は融解し失明することもある。
 診断は角膜の上皮を削り取るなどして組織を採取し、染色して顕微鏡で観察するのが基本。治療法に確立されたものはないが、病巣部分を削ってアメーバを直接除去するのが最も効果的で、一部の抗真菌薬や抗原虫薬、消毒薬の点眼や、抗真菌薬の内服を組み合わせる。石橋さんは「初期に診断できるかが鍵を握る。ほかの病気との鑑別などで一定の経験が必要だ」と説明する。
 
▽ケア徹底を
 コンタクトの不適切使用はアカントアメーバ角膜炎の原因の85―90%を占めるとされる。日本コンタクトレンズ学会などの最近の調査でも、コンタクトが原因と考えられる角膜感染症の入院例の多くから、アカントアメーバが検出された。
 石橋さんは08年までに約70例のアメーバ角膜炎を報告している。近年急増しているのは、2週間交換型のソフトレンズと、洗浄や保存などが1つでできる「MPS」と呼ばれる液体とを組み合わせ使っているケースという。
 「MPSだけでアメーバが完全に死滅することはない。レンズのこすり洗いとすすぎをきちんとすること、レンズケースは乾かし定期的に交換することを徹底してほしい」と、石橋さん。
 メーカー各社は消毒効果を高めた製品を発売するなどしているが、石橋さんは「煮沸消毒が主流だった時代にこの病気が問題になることは少なかった。MPSがレンズケアの主体となった現状では、国内での対策は不十分だ」と訴えている。(共同通信 江頭建彦) (2009/01/20)

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