がんワクチンの試験進む
「ほとんど消えた」患者も
1―2週に1回の注射
 がんをワクチン接種で治療する臨床試験が全国の病院で進んでいる。試験は1―2週間に1回、注射を打つだけで、これまで計1千人近くに行われた。がんがほとんど消えた患者がいる一方、大きな副作用は確認されていないという。関係者は「新しい治療法になり得る」と注目している。
 
▽リンパ球が攻撃
 「ワクチンといってもインフルエンザのように病気の予防ではなく、がんの再発予防や治療が目的です」と話すのは、開発に取り組む中村祐輔・東京大医科学研究所教授。
 人間の体にはがん細胞をリンパ球が攻撃する免疫機能があるが、老化などで免疫が低下し、がん細胞の増殖に攻撃が追いつかない場合はがんになってしまう。
 中村教授は、リンパ球ががん細胞の表面にある小さなタンパク質の突起物(ペプチド)を目印に攻撃することに注目。患者のがん細胞でのみ活発に働く遺伝子を突き止め、これをもとにしたペプチドを人工的に作って患者に注射するペプチドワクチン療法を考案した。
 ワクチンでリンパ球を大量に作ることで免疫機能を高め〝大軍〟でがんを攻撃するが、リンパ球は他の健康な細胞は攻撃せず、副作用は少ないとされている。ただし、ワクチンが使えるには白血球の型(HLA)や遺伝子の種類が合うなど一定の条件がある。がんの転移の状況などによっても、臨床試験に参加できない場合があるという。
 
▽各地で効果
 中村教授のワクチンは、これまで各地で300人近くに使われている。
 「予想外に効果があった」と話すのは、ぼうこうがんの治療に取り組む岩手医大の藤岡知昭教授。07年に開始したワクチンの安全性を確認する試験には、がんの進行や転移で他に手だてがない患者6人が参加。2種類のワクチン注射を週1回、5週間続けたところ、4人でがんが縮小したり、進行が止まったりした。副作用は1人に発疹が出ただけだったという。
 藤岡教授は「早期がんや再発予防には効くと思っていたが、進行がんでは期待していなかっただけに驚いた」と振り返る。今年からは再発予防が目的の2段階目の試験を開始。2年間で120人に参加してもらうのが目標で、将来的にはワクチンと別の治療法の併用も選択肢の1つという。
 食道がんで試験を進める山梨大でも、進行がん患者10人のうち、2人でがん縮小が確認された。河野浩二・准教授は「がんが小さくなっていく様子をCT写真で説明すると『撮影の角度や順番を間違えているのでは』と疑われた。解決しなければならない課題もあるが、期待していいのでは」。
 
▽特区に指定
 「がん難民といわれる患者にとって、生きる望みが0%か0・1%かは大違い。ワクチンはそんな患者の希望の光となる。出来るだけ早く実用化させたい」と中村教授。5年以内に医薬品として承認を得たいという。
 医科研とは別に札幌医大、国立がんセンター東病院(千葉県)、久留米大(福岡県)でも、それぞれ違うタイプのワクチンを研究中で、久留米大は12月、「がんワクチン外来」を来春にも設置すると発表。伊東恭悟教授らは「自由診療となるので治療費が数十万円かかるかもしれないが、承認を待てない患者もいる」と説明する。
 中村教授らはこの四施設を中心に、全国の61施設でネットワークを組織し、情報交換や試験計画の統一を進める。政府も早期承認に有利となる先端医療開発特区(スーパー特区)に指定し、後押しする姿勢を打ち出している。(共同通信 新居一樹) (2009/01/06)

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