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我慢できないような強い痛みが続く慢性疼痛(とうつう)の治療法として、小さな装置を体内に埋め込み微小な電気パルスで脊髄(せきずい)を刺激する「脊髄刺激療法」が注目されている。薬物療法や神経ブロックなど通常の治療で効果が上がらない難治例でも痛みが軽くなることが多い。国内でこの治療を受けた患者は累計で約3千人にとどまるが、海外では毎年約2万人に埋め込まれているという。
▽多様な痛みに効果
「痛みは本人にしか分からず、直接生死にかかわらないため軽視されがち。でも何をやっても治らない痛みが世の中にはたくさんあり、苦しんでいる人は大勢いる」
埼玉医大麻酔科ペインクリニックでこの治療法に取り組んでいる相田純久(あいだ・すみひさ)助教授は、疼痛治療の重要性をこう強調する。
相田助教授によると、同療法の対象で最も多いのは、けがなどをきっかけに慢性疼痛が起こり、触るだけでも激痛を伴うカウザルギーや、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)の患者。脊椎(せきつい)の手術後に痛みが残るFBSSという疾患の患者も多い。
糖尿病や閉塞(へいそく)性動脈硬化症、バージャー病などの末梢(まっしょう)動脈が詰まる疾患や、手足の切断後に、無いはずの手足が痛む幻肢痛、帯状疱疹(ほうしん)後の神経痛などの患者も対象。
「モルヒネなどがほとんど効かない場合でも、脊髄刺激療法を行うと多くの人に何らかの効果があり『痛みが気にならなくなった』『薬が不要になった』などという人も7割以上に上る」(相田助教授)という。
▽刺激装置を体内に
埼玉医大の場合、3日間程度の入院が必要だが、脊髄刺激装置の埋め込み自体は、局所麻酔で2―3時間程度の簡単な手術で済むという。
硬膜外ブロック注射と同じ要領で背中側から針を刺し、刺激を伝える電極を針の中に通して硬膜の外側に挿入。実際に刺激を与えエックス線で確認しながら効果が最大となる位置を探す。
十分な効果が得られる場所が見つかったら直径約5センチ、厚さ約1センチの心臓ペースメーカーに似た刺激装置を腹部や胸部に埋め込み、刺激電極と接続する。
「効果が最大となる電極の位置をミリ単位で合わせる必要があるが、手術自体は簡単だ」と相田助教授。電極や刺激装置は体内にあるので引っ掛かって抜けることもなく、入浴も可能だ。
刺激装置に組み込まれたバッテリーの寿命は平均10年。切れたら本体ごと交換する必要があるが、簡単な手術で30分程度で済むという。
▽好みの刺激に調節
痛みの感じ方は人によって大きく異なる。このため脊髄刺激療法では体内の刺激装置を外からリモコンで操作し、患者自身が好みの刺激に調節できるようになっている。
「24時間痛みがある人は常時刺激するが、痛みによっては夜だけ痛いとか、夕方になると痛いという場合もある。どういう刺激が最適かは本人にしか分からないので、自分で調節してもらう」と相田助教授。
調節方法はスイッチのオンオフのほか、刺激の強弱、周波数、パルス幅の三つ。痛みが消える仕組みははっきり分かっていないが、電気刺激を与えるとトントントンと軽くたたくような感じがして、痛みが軽くなったり消えたりする。
「薬が全く効かず夜眠れなかった人が、この治療で痛みが軽くなり『人生観が変わった』と言うほど喜ぶこともある」(同)という。
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