ひざ靱帯手術にナビ技術
ピンポイントで位置確認
東大、移植精度高める

 太ももの大腿骨とすねの脛骨をつなぐひざの前十字靱帯は、スポーツや交通事故で切れることがある。治療には新たに靱帯を作って移植するが、ピンポイントで最適の場所に再建できるかどうかが鍵。東京大病院では、脚と手術用ドリルに付けたアンテナから位置情報を得て、モニターの画像に表示される仮想の靱帯を見ながら移植するナビゲーション手術が好成績を挙げている。


  ▽ずれると劣化
 前十字靱帯があるのは、大腿骨と脛骨の間の高さ約2・5㌢、幅約2㌢の関節のすき間。後ろには後十字靱帯が走り、たすき掛けをするように2つの骨をつなぐ。
 急な方向転換やジャンプの着地、接触プレーなどで断裂することがあり、サッカーやバスケット、スキーの選手らに多く見られる。
 ほっておくと、関節が外れかかった状態になる亜脱臼を起こし、運動や日常生活でも痛みや腫れを招く恐れがある。周りの半月板や軟骨も傷み、曲げ伸ばしや歩行が難しくなる変形性膝関節症にもなりかねない。
 通常は、患者の太ももの裏などから摘出した腱(けん)で太さ8―9㍉の靱帯を作って移植、金属製のねじとピンで固定し生着させる。切れた靱帯を縫い合わせる治療よりも有効性が高いとされ、国内では推定で年間1万例以上行われている。
 東大病院整形外科の中山修一医師は「もともとあった位置に、靱帯を正確に付けることが重要。数㍉でもずれると、骨に挟まれて早く劣化し改善しない」と説明する。

 

▽仮想の靱帯

一般的な手法は、患部に差し入れた関節鏡やエックス線撮影による画像を見ながらの移植。「成否は、熟練した医師の職人的な技に左右されがち。患者ごとに角度や骨の形に差があり、個々にあったオーダーメードの手術が必要になる」(中山医師)という。
 そこで、より精度を高めようと導入されたのがナビゲーション手術だ。
 脛骨から大腿骨に向けて斜めに骨を削ってトンネルを作り、そこに靱帯を通す。この際、トンネルを開けるドリルに付いたアンテナと、別に脛骨に刺したアンテナから出る赤外線を、特殊なカメラでキャッチ。脛骨のアンテナを基準にしてドリルの位置を読み取り、あらかじめ撮影しモニターに映し出した患部のエックス線画像に重ね、仮想の靱帯を表示する。
 仮想靱帯は、ドリルを動かすと同じように動くので、医師は最も良いトンネルの長さや太さ、ルートを選んで穴を開け、正確に靱帯を移植できる。

 

▽91%が良好
 2003年12月以降に、この手術を受けて1年半以上たった23人に対し、ひざの動きや靱帯の安定性、機能を同病院が評価したところ、階段を踏み外して再手術となった症例など2人を除く21人(91%)が良好だった。
 手術は2時間半以内で終了し、手術後の入院は10-14日。4カ月程度でジョギングなどのトレーニングを始め、スポーツを普通にできるようになるのは8カ月後が目安になる。
 このナビゲーション装置を輸入、販売しているメドトロニックソファモアダネック(大阪市)によると、装置は主に脳神経外科と脊椎の手術で用いられ、前十字靱帯手術は少ないという。
 中山医師は「ナビ手術は難易度が高い症例でも対応しやすく、再手術を避けられる可能性も高い」と話している。





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