帝王切開経験後に普通出産
リスクを評価、実施進む
半数前後VBAC試みる

 帝王切開で子供を産んでいても、次は普通の出産で。こうした帝王切開経験後の経膣(ちつ)出産(VBAC=ブイバック)は、帝王切開経験者の半数前後に実施が可能とみられ、リスクを踏まえた上で進められている。
 最も心配される子宮破裂は完全な予測が難しいが、出産監視装置を使ったり、帝王切開時の手術状況、術後経過を評価したりして安全性を検証し、VBACに成功する妊婦が少なくない。
 実施に当たっている愛育病院(東京都港区)産婦人科の坂井昌人医師は「VBACが可能な妊婦はたくさんいるが、帝王切開の方が、母子ともにリスクが少ないのは確か。まず医師に相談を」と話す。
▽対象者絞る傾向
 こうしたお産の形態は昔からあったが、リスク評価などを伴った特有の概念、手法としては1990年代に米国で現れ、日本には同年代後半に導入されたという。
 「安全性をさらに重視し、対象者を絞るのが最近の傾向。ただ1度帝王切開を受けると、次も帝王切開をする病院が多い」と坂井医師。
 国内外のデータを調べると、帝王切開を受けた妊婦の40―70%がVBACに臨み、うち60―80%が成功。残りの妊婦は、お産の進みが良くないなどの理由で、途中から帝王切開になったという。
 愛育病院では2001年、前回帝王切開だった41人のうち9人がVBACを選択し、5人が成功、4人は緊急帝王切開になっている。

 ▽母子に危険も
 VBACに慎重さが求められるのは、帝王切開で切った子宮の傷あとが裂ける子宮破裂の可能性が、傷あとのない人より高いからだ。
 子宮が破れ、胎児が母体の腹部側に出てしまうと、酸素不足に陥った胎児に障害が残るケースもある。
 さらに完全子宮破裂では、大量出血による子宮摘出のほか、母体に危険が及ぶ恐れもある。ただ軽い破裂は無症状のこともあり、母子の安全性は一般に高い。
 帝王切開の経験がない妊婦の子宮破裂は1万―2万人に1人だが、VBACの場合は1000人に1―8人、最近では100人に1人とのデータもある。
 100人に1人が多いのか少ないのか、実施する医師にとっても微妙な数値。しかも子宮破裂の確実な予測は難しく、明確な判断基準もない。

 ▽サポートしたい
 事前評価のポイントは何だろうか。
 帝王切開部に超音波をあてて子宮膜が薄くなっていないか、厚さをみる検査、異常な痛みの有無も参考になる。
 坂井医師は、1度でも子宮破裂した人は、実施対象から外している。再び破裂する確率が高いからだ。
 切開部の傷の形状も重要で、帝王切開が別の病院で実施されていれば、当時の状況を問い合わせることも。胎児の大きさも考慮する。
 「1度は普通の出産をしてみたい」と相談に訪れる妊婦に対し、愛育病院では、次のような注意事項を説明している。
 ①胎児心拍数が分かる装置で出産中に母子を監視する②予定日を過ぎても陣痛が来ないときは帝王切開に変える場合がある③適度な陣痛があっても進行が良くないときは帝王切開に変更する可能性が一般のお産よりも高い―など。了解してもらうことが、実施条件の1つになる。
 坂井医師は「緊急事態に対応できる設備がある施設でないと、VBACはできないし、医師も危険と隣り合わせで大変だが、妊婦がリスクを知り、実施条件が整えば、サポートしたい」と話している。


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