飲んで免疫力アップ
手術前に免疫栄養剤
点滴の短所を克服

 ゴクゴク飲んで免疫力を積極的にアップ。こんな新しい流動食が医療の最前線に取り入れられている。「免疫栄養剤」を使った栄養管理法で、単に栄養状態を改善するだけでなく、特殊な栄養成分により直接、感染防御力を向上させたり、創傷治癒を促進させるのが目的。手術前の患者に投与されると、術後の感染性合併症の減少や早期退院など効果があることが欧米で報告されている。
▽新しい考え方
 「通常、栄養状態が悪ければ体の免疫力も低く、良ければ免疫力も高くなるが、“免疫栄養”は従来とは違う新しい考え方」と防衛医大第一外科の橋口陽二郎講師。
 「栄養的には十分な人でもさらに免疫力をアップさせることが可能になった」という。
 病院内での栄養補給といえば、日本では点滴が主流。特に鎖骨下の太い静脈にカテーテル(管)を取り付け、栄養分を注入する「中心静脈栄養」は食事並みの栄養が取れるため多用されてきた。
 しかし、この方法はカテーテルを挿入する際に周囲を損傷したり、挿入部を常に清潔にする必要があるなど手がかかる。さらに食事が不要なため、使われない小腸などの消化管が委縮し、腸が一端を担っていた体の免疫機能が低下してしまうなどの欠点があった。
 ▽日本は昨夏発売
 「このため、欧米、特に米国では食べ物の形で消化管から吸収する経腸栄養の研究が進んだ。管理が楽で低コスト、生理的にもよいという長所が見直され、現在のガイドラインでは経腸栄養を利用できない人だけが中心静脈栄養を使うことになっている」と橋口講師。
 免疫栄養剤は従来の流動食にグルタミン、アルギニンなどのアミノ酸や、魚油に含まれるω(オメガ)3多価不飽和脂肪酸、核酸(RNA)などを加えたものだ。欧米では既に数種類が市販され、使用されている。
 グルタミンは免疫力を上げる作用があり、アルギニンは成長ホルモンの分泌促進作用、多価不飽和脂肪酸には炎症を促進する物質がつくられるのを抑える働きがある。核酸には体の免疫機構を担う白血球の働きを増強させる作用がある
 米国で開発、昨夏、日本で発売された免疫栄養剤「インパクト」は、アルギニンとω3多価不飽和脂肪酸、核酸が添加された濃厚流動食だ。
 ▽最適な使用法確立へ
 「経腸栄養なので使いやすく、いろいろな手術を受ける人に使える。これまでの欧米のデータで、術後の感染症が少なくなるという効果が確認されている」(同講師)
 免疫力が下がり、感染症にかかりやすくなった高齢者や慢性疾患の患者などにも使用可能だ。
 インパクトの場合、手術前の患者は、米国では1日1リットルの摂取とされている。しかし、体重差や人種差があるため、現在、橋口講師らは日本人の最適使用法の確立を目指して臨床研究を続行中。
 免疫栄養剤は術前6―2日前までの5日間摂取するが、1日の摂取量を750ミリリットル、250ミリリットルなどに調節し、術後の感染症の有無などを比較している。
 インパクト発売元の味の素ファルマなどによると、免疫栄養剤は日本では「食料品」の扱い。米国では味は無いが、日本の製品は乳酸飲料を濃くしたような味にした。  橋口講師は「医療で使うので、どれくらいの量、期間が1番有効なのかをきっちり決める必要がある」と話している。
 インパクトは医薬系卸を通じて医療施設に販売されている。病院の売店で売られている所もある(400円前後)が、医師や栄養士と相談して使う必要がある。



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