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血管に挿入したカテーテルの動きを強い磁力で体外から遠隔操作する「磁気ナビゲーションシステム」が米国で開発された。国内でも臨床試験が始まろうとしており、普及すれば、どこの病院でも〝名人級〟のカテーテル治療を受けられるようになりそうだ。
▽熟練が必要
カテーテル治療は、エックス線画像で確認しながら、太ももなどの血管からチューブ状の細いカテーテルを心臓や脳などに挿入して行う。いきなり挿入するのが難しい場合、挿入しやすいガイドワイヤを先に入れ、このワイヤにかぶせるようにカテーテルを入れる。
不整脈の原因となっている心筋の細胞を加熱して治すカテーテルアブレーションや、小型の風船で血管の狭窄(きょうさく)を広げる冠動脈バルーン形成術、くも膜下出血の恐れがある脳動脈瘤(りゅう)にコイルを詰めてふさぐ塞栓(そくせん)術などさまざまな種類がある。
東京女子医大循環器内科の庄田守男(しょうだ・もりお)助教授によると、通常のカテーテルの操作は「手元のハンドルを動かすことで曲がる」という意外にシンプルな道具だ。だが細くて複雑な形状の血管を通し、体の奥の目標に到達させるにはかなりの技術が必要。医師の熟練度に応じて手術時間や成績は大きく変わるという。
▽方向は自由自在
遠隔操作を可能にした新しい磁気ナビゲーションシステムは米ベンチャー企業「ステレオタキシス」が開発。欧米を中心に今年から臨床研究が始まっており、国内では東京女子医大病院に一台導入されている。
患者用ベッドの両脇に二つの強力な磁石を設置。専用のガイドワイヤは通常よりも軟らかい素材でつくられ、先端には強力な小型磁石が埋め込まれている。
ガイドワイヤを進めたい方向に操作用のレバーを傾ける。するとベッド脇の二つの巨大な磁石が回転して、ベッド周辺の磁場の向きを変え、ガイドワイヤの先端が望む方向に曲がる。向きだけでなく前進、後退も〇・一ミリ単位で制御可能だ。
磁場の強さは磁気共鳴画像装置(MRI)の約10分の1。
「このシステムを使えば血管の急なカーブでもガイドワイヤが吸い込まれるように入っていく。人の手では絶対に入れられないところにも自由自在に入れられる」と庄田助教授。
カテーテルの挿入時間を短縮できるので、患者や医師のエックス線被ばく量も大幅に減る。
▽安全、確実
現在、不整脈治療について臨床試験を申請中で、順調なら年内か来年早々にも開始できる見通し。将来は冠動脈の狭窄や転移性肝臓がん、脳動脈瘤などの治療にも応用したい考えだ。
庄田助教授らはこのシステムを利用し、自動的にカテーテルを出し入れし、不整脈などを診断、治療するシステムの開発にも取り組んでいる。
MRIなどで撮影した血管の三次元データをコンピューターに取り込み、検査、治療したい個所を画面上で指示すると、カーナビゲーションのように最適な経路となる血管を選択。カテーテルが自動的に目標に到達し、診断、治療できるようにしたいという。
「これまでできなかった治療を可能にするのも目的の一つだが、今できる治療をより安全、確実に行うための道具にもなる」と庄田助教授。「普及すれば、どこでも高いレベルの治療が受けられるようになる。そういう時代がすぐ近くまで来ている」と話している。
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