筋肉切らない人工関節手術
QOL向上を目指して

  筋肉を傷つけない人工ひざ関節の置換手術が注目を集めている。傷口は8―10センチほど、回復も早く手術翌日にはリハビリテーションを開始できるという。この難手術に取り組む北里研究所病院(東京都港区)人工関節センターの月村泰規センター長は「患者のQOL(生活の質)向上のために、ひざ関節手術の半分はこの手術を取り入れたい」と話している。


 患者への負担が少ない

 関節の病気で悩んでいる人は多い。変形性関節症や関節リウマチなどで苦しむ人は百万人近いと推定され、高齢社会で増加も予想されている。
 こうした関節の病気には特効薬がなく、痛みや不自由さを解消する最後の手段は、人工関節への置換手術しかない。現在、股(こ)関節でざっと年間三万人、ひざ関節は同四万人近い人が置換手術を受けている。
 最近、皮膚の切開幅が小さく患者への負担が少ないMIS(最小侵襲手術)と呼ばれる手術も開発されているが、月村センター長らが採用しているのはMISを一歩進めた「MIS QS」(大腿(だいたい)四頭筋温存手術)だ。この方法は、ひざの上にある大腿四頭筋を切ることなく特殊な器具を使って手術するのが特徴。切開幅を小さくできるため、早くからリハビリが可能で、従来法の3分の2程度の期間で退院できる。難しい手術のため、50例以上の経験を持つ医師は全国でも10人ほどだという。
 患者は2週間ほどかけて状態をチェック、その間に手術のために自己血を採血して備える。手術は2時間程度で、現在は月に5人のペースで手術を続けている。

▽4分の1が可能

この手術は、誰でも受けられるわけではない。関節の変形や損傷がひどいと従来法による手術になる。「現在のところ約4分の1はMIS QSが可能。この手術に取り組んでいると、従来の方法も小さな切開で処置できるようになり、メリットは大きい」と月村センター長。
 手術はチーム医療のため施設を挙げて取り組むセンター方式が望ましく、月村センター長は慶応大学医学部の松本秀男助教授(整形外科)らと協力し、治療技術のアップや患者のQOLの向上に取り組んでいる。
 「スタッフが育てば、術後の患者のケアを含めてもっと安全に手術できるようになる。年間の手術数は3百例が目標。筋肉を傷つけないので、手術後の筋力、ひざの曲がりの回復が早く、痛みがとれるとゴルフやウオーキングを楽しめるようになる」と月村センター長は意欲を示す。








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