対象は多様、難しい対策
HIV感染、匿名で検査
年1万件超「全国の縮図」
 エイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者報告数の国内の累計が、今年9月末の時点で1万5千人を突破した。毎年の報告数は右肩上がり。1日に4人が新たに感染していることになる。治療法が進歩し、感染者の発症が抑えられるようになった後も患者数が減少しない国は、先進国では異例だ。問題はどこにあるのか。拡大を防ぐことはできるのか。
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東京・JR新宿駅から歩いて3分。大通りに近いオフィスビルの3階に、エイズウイルス(HIV)検査の件数が年間1万を超える東京都南新宿検査・相談室がある。ビルの入り口には訪れる人に配慮して、エイズに関するポスターや看板はない。HIV検査を行っている施設には見えないが、ここが国内のエイズ対策の“最前線”だ。
 
▽ほぼ毎日
 匿名で無料の検査が受けられるのは、祝日を除くほぼ毎日。交通の利便性もあり、東京だけでなく周辺地域からも多くの人がやってくる。
 「南新宿は全国の縮図だ」と話すのは、ここで毎日約40人のカウンセリングをしている小島弘敬室長。厚生労働省エイズ動向委員会によると、2007年の国内の新規HIV感染者・患者は計1500人。感染者の7割近くが同性間の性的接触が原因で、傾向は検査件数が全国一の南新宿検査・相談室と同じだ。
 検査の流れはこうだ。あらかじめ電話で予約を入れた日に行き、受付で申込書に性別や年齢などを記入。待合室にいると番号で呼び出される。個室で看護師から検査の流れなどの説明を受けた後に採血が行われる。
 結果は1週間後以降に再来室し、別の個室で医師から直接、説明を受ける。部屋にはソフトなBGMが絶えず流れる。落ち着いた雰囲気づくりと、外部へ声を漏らさないためだ。
 結果が陽性だった人や、陰性でも気になるという人には、さらに別室で専門医によるカウンセリングが受けられる。
 
▽能力は限界
 HIVの感染経路は(1)性行為(2)輸血や注射の回し打ちによる血液感染(3)母子感染―の主に3つだが、多くの陽性者に接してきた小島室長は「男性同士のコンドームを付けない性行為が最も危険だ。こうした人たちは考え方や行動が多様なため、対策も難しい」と話す。
 陽性者に最も重要なのは医療機関を受診してもらうこと。「あなたにはかかりつけの施設があるか」「カウンセラーのいる病院に行くべきだ」。検査後のカウンセリングで粘り強く助言を繰り返す。
 南新宿検査・相談室での検査で陽性と判明したのは2005年が104人、06年は122人、07年は134人と毎年増加していた。今年は10月時点で85人と、ようやく減少傾向が見えてきたが「検査能力は限界。都内にもう1カ所、同様の施設をつくるべきだ」との声もある。
 
▽献血で判明
 全国の保健所でもHIV検査が無料で受けられる。検査は昨年、約15万4千件に上り02年以降、毎年増えている。一方、献血で陽性が判明する人も年々増加し、検査目的での献血は大きな問題となっている。
 献血で判明した陽性者は07年で102人。都道府県別では大阪が最多で26人、10万人当たりの数も6・9人と飛び抜けて多かった。
 大阪市には今年3月、検査・相談や啓発活動支援のためのセンターがオープン。検査回数も当初は週1回だったが、8月からは週4回に増えた。
 これとともに大阪で献血者の陽性率が減少した。厚生労働省の担当者は「直接の証明は難しいが、検査態勢強化に伴い献血での陽性者数が減ってきている。さらに検査を強化することが重要だ」としている。
   東京都南新宿検査・相談室の予約受付電話は03(3377)0811
(共同通信 山本峰次) (2008/12/16)

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