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事故情報、共有システムを 体外受精の安全性確保 |
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不妊治療の中でも高度な技術とされる体外受精が普及し、年間出生児数は2万人近くに上る。不妊に悩む夫婦の「頼みの綱」だが、精子や卵子、胚(受精卵)を体外で扱うため、別人と取り違える事故の危険も潜む。個々の施設の取り組みはもちろん、事故や事故寸前事例の情報を共有し、教訓を生かすシステムが必要との指摘が出ている。 ▽夫の名前も確認
1年の採卵数が1200件近い福岡市の「蔵本ウイメンズクリニック」。清浄度が保たれ、照明を落とした培養室に入ると、温度や酸素、二酸化炭素濃度が体内と同じに調節された培養器がいくつも置かれ、低い駆動音を響かせていた。奥ではスタッフの胚培養士が顕微鏡を見ながら極細のガラス管を操作し、卵子に精子を注入する顕微授精に取り組んでいる。できた胚は患者ごとに異なる容器に分けられて培養液に浸され、子宮に戻されるまでの数日間を培養器で過ごす。容器1つ1つの本体とふたには患者の名前と識別番号が書かれていた。 「別人に移植しないよう、誰のものか繰り返し確認している」と、胚培養士の江頭昭義主任。作業台で一度に扱う胚や精子、卵子は夫婦1組分だけで、スタッフが必ず2人でチェック。治療を受ける女性には、自分の名前と生年月日を、同じ名前の患者がいる場合にはさらに夫の名前と生年月日も言ってもらう。 同クリニックに通う福岡市の30代の女性は「通院はここが4軒目だが、診療の際に名前を聞かれたり、カルテが自分のものか確認を促されたりするのは初めて。より信頼できる」。蔵本武志院長は「いくつかの不妊治療施設で情報を共有し安全性を高めるようにしている」と話す。 ▽血液型合わず
国内では1995年に、石川県のクリニックが誤って別人の受精卵を移植したことが2000年に判明。02年には愛知県の病院で人工授精時に夫以外の精液を注入した事故があったが、いずれも妊娠はしなかった。「体外受精で産んだ子が、自分の子ではないかもしれない」。不妊患者らでつくる「フィンレージの会」(東京)には数年前、女性からこんな相談が寄せられた。 子どもの血液型が夫婦の組み合わせと合致しない。取り違えがあったのでは―。体外受精を実施したクリニックは「同じようなケースは過去にもあったが、調べようがない」と取り合ってくれなかったという。 同会スタッフ、鈴木良子さん(47)は「本来胎内にあるはずの胚が外部で管理される以上、取り違えを含め、ミスは起こり得る」と懸念を示す。 ▽取り組みに遅れ
日本産科婦人科学会によると、体外受精の実施施設は全国で500を超え、出生児数も年々増加。06年は約1万9600人で、同年の全出生児数に占める割合は55人に1人だった。だが、安全性向上のための取り組みは遅れ、個々の施設の努力に委ねられているのが現状だ。 事故対策では日本医療機能評価機構(東京)が全国の病院などから具体例を収集、分析して再発防止に役立てる制度があるが、不妊治療に関しては十分機能していない。 機構の担当者は「報告が義務付けられているのは国立病院機構や大学病院を中心とする大規模病院で、不妊治療専門クリニックのような小規模施設は対象外。自主的な報告も少ない」と話す。 鈴木さんは「胚の取り扱いミスや薬の事故など、個々のケースを積み上げることが重要。すべての不妊治療施設が十分な対策を取れるようにしてほしい」と訴えている。(共同通信 小田智博) (2008/12/02) +font> |