新たな分子標的薬が登場
大腸がん、選択肢広がる
「個別化治療」に期待
 大腸がんの増殖などにかかわるタンパク質を攻撃し、がんを縮小させたり増殖を抑えたりする新しい分子標的治療薬が9月に登場した。患者の特定の遺伝子を調べ、効果が出そうな人だけに投与する「個別化治療」への期待もある。一方、昨年発売された別の分子標的薬も安全性などの調査が進み、治療の選択肢が広がってきた。
 
▽命令をブロック
 大腸がんは、早期であれば内視鏡や開腹による手術で完治することが多いが、進行して転移したり、再発で切除が難しかったりする場合は抗がん剤治療が選択される。
 新たな薬は、既に世界70カ国以上で承認されている注射液の「セツキシマブ」(製品名アービタックス)。大腸がんの9割前後にみられ、細胞の増殖や新たな血管ができる際のスイッチとして働くタンパク質「EGFR」に結合し、増殖などの命令をブロックすると考えられている。
 国内の臨床試験では、EGFRが陽性の進行がん患者で、抗がん剤の「イリノテカン」などで効果がない人に、この薬とイリノテカンを併用した結果、31%にがん縮小などの効果があり、進行を抑えたケースも含めると64%だった。
 
▽上乗せ効果
 大阪医大病院化学療法センター長の滝内比呂也准教授によると、大腸がんの抗がん剤は1950年代に開発された「フルオロウラシル」が、効果を強める「レボホリナート」とともに使われてきたが、90年代半ば以後、イリノテカンと「オキサリプラチン」が普及。
 両剤をフルオロウラシル、レボホリナートと組み合わせる治療法などで、平均的な生存期間はフルオロウラシル中心時代の約1年から20カ月前後に向上。「セツキシマブを加えれば、上乗せ効果で25カ月という結果も出ている。化学療法はここ10年で大きく進歩した」と、滝内准教授。
 ただ、ほかの抗がん剤との併用効果は、大腸がんに多く見られる「Kras」という遺伝子に変異がある場合は明らかでないことが最近、報告され、欧州では変異がない場合だけ薬を使用するよう、承認が変更された。
 日本でも、Kras遺伝子の検査は一部のがんで保険が使え、専門医らはこれに大腸がんも加えるよう国に要望している。国立がんセンター東病院(千葉県柏市)の吉野孝之医師は「コスト面からも、検査で治療対象を選ぶことは重要。個人の体質に合った個別化治療への一歩になると言っても過言ではない」と指摘する。
 
▽全症例を調査
 セツキシマブは効果の半面、発疹などの皮膚症状やアレルギー反応など副作用も報告されている。国内での治験症例が少ないため、使用は緊急対応などが可能な医療機関に限られ、一定のデータが集まるまで全症例が調査される。滝内准教授は「きちんとした施設で医師の監視下なら、重篤になることは極めて少ないが、初回投与の際は特に注意が必要だ」と話す。
 大腸がんの分子標的薬では、血管ができるのを防ぐなどしてがんを縮小させる「ベバシズマブ」(製品名アバスチン)で、昨年6月の発売以降、全症例を対象に行われた調査結果が今年10月末に発表された。約2700人の集計で副作用は高血圧や出血が中心。重篤なものは14%だった。これまで海外で報告された傾向と大差はないという。
 滝内准教授は「海外ではベバシズマブが第一選択薬で、セツキシマブが第二、第三選択薬。現状では日本でもこうした使い分けになるだろう」と話している。(共同通信 江頭建彦) (2008/11/25)

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