「なぜ」に触れていない 背景にも目を向けて |
| 〈時間をやりくりして説明をした上で、訴訟を起こされ、さらにマスコミの餌食になったとき、訴えられた本人だけでなく、そういった状況を目のあたりにしている医師たちのモチベーションが折られることは想像に難くないと思いますが、いかがですか?〉 山梨県で病院の副院長をしている男性医師(46)からは、医療者の“メディア不信”を代弁するようなメールが届いた。
医師が関心を寄せたのは、手術後に夫が急死したことに疑問を抱き、病院を提訴した宮城県の主婦の苦悩を伝えた記事。〈(患者側が)納得ができなくて、裁判所に訴えるのは、権利ですから否定はしません。ただ、その背景にあった問題まで報じなければ、患者・遺族の懲罰感情をあおるだけで、医療の安全といった根本的な問題は何も解決しません〉 主婦は、麻酔薬の過剰投与が死因に関係しているのではないかと思った。記事は、担当の麻酔科医が手術の際、主婦の夫をじかに診察せず、自宅から電話で薬剤投与を指示していた点を強調。 〈なぜ(麻酔科医が)電話で指示せざるを得なかったかという点に触れられておりません。麻酔科は手術があれば対応しなければならないのです。手術がある科は複数あります。当然、多忙なのです。患者が十分な説明といっても、患者の希望時間に対応できるわけではありません〉 記者は病院を運営する宮城県に取材を試みたが、係争中を理由に拒まれた。それ以上、麻酔科医らへのアプローチはしなかった。 〈粘り強く双方の主張をとって、読者が公平な判断をできる材料を提供してほしいのです。アンバランスな情報提供は、医療、患者の相互不信をあおります〉 メールで医師は、現状への懸念も示した。 〈医師が受けるバッシングもさることながら、患者や家族への医療者からのバッシングもあり、どちらも不毛でむなしい状況しかもたらさず、非常に嘆かわしい〉 一連の記事は、モンスター患者への対応など、医療者側の苦境も伝えた。両者が向き合えない実情を描き“出口”を見いだせないか。記者はそんな思いで取材を続けた。 〈全体のバランスは比較的良いと思いますが、今後は、個々の記事が及ぼす影響も考えていただければ幸いです〉 この連載に対する感想やご自身の体験を「医療漂流」取材班にお寄せください。ファクスは03(6252)8761、電子メールはhyoryu@kyodonews.jp (2008/11/18) +FONT> |