ニコチンパッチや錠剤で
増える選択肢、再挑戦も
「治療継続が大切」
 苦しく、厳しい禁煙。挫折する人も少なくない。喫煙を「嗜好」ではなく、やめたくてもやめられない「ニコチン依存症」ととらえ、患者への禁煙治療が2006年4月から公的医療保険の対象になった。依存症克服のつらさは緩和されたのか、費用負担は。禁煙治療の現状をみた。
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 喫煙者が「たばこをやめたい」と思っても、簡単ではない。イライラしたり強い眠気を感じたり、口の渇きを覚える人もいる。治療で禁煙に成功した人、挫折しながら再挑戦する人に話を聞いた。
 舞台の技術スタッフ、小金井伸一さん(28)=東京都世田谷区在住=は7月、地方公演を翌週に控えて禁煙を決意した。飛行機を利用すれば長時間たばこを吸えない。将来は演劇の盛んな英国などに留学したいが、喫煙規制が多くたばこの値段が高い国ばかりだ。始めるいい機会だと思った。
 小金井さんはたばこを手放せず、平均して1日1箱吸っていた。喫煙歴約10年。7月18日、世田谷区の「樹のはなクリニック」(奈良岡美恵子院長)の初診時には10項目の依存度テストや喫煙歴などから依存症と診断され、治療の内容や費用、薬についての説明を受けた。
 治療は、ニコチンを含んだパッチを腕などに張ってニコチンを補充し、禁断症状を和らげる方法と、たばこをおいしいと思えなくなる錠剤を服用する2通りがある。診察は5―7回で、いずれも約12週間かかる。
 仕事は不規則で、食後に正しく薬を飲むのは難しい。小金井さんはパッチを選んだ。毎朝1回張り替えればいいからだ。パッチは3種類。だんだんと小さいサイズにして、皮膚から吸収されるニコチンの量を減らしていく。
 張る位置を毎日変えたこともあって、かぶれもなく小金井さんの治療は順調に進んだ。口寂しいときはガムをかんでたばこを我慢、仕事で延び延びになっていた最後の診察を受けるのも間近だ。
 ただ、禁煙に成功する患者は必ずしも多くない。厚生労働省の調査によると、パッチで5回の治療をすべて終了した患者は30%にすぎない。終了した患者でも9カ月後も禁煙を続けている人は46%にとどまる。
 奈良岡院長は「なぜ禁煙するか、患者が納得していることが重要。漠然と『健康に悪い』では成功はおぼつかない」と言う。「予約時に現れない人には電話や電子メールで受診を促している。途中で吸ってしまっても、あきらめずに治療を継続することが大切です」
 川嶋孝三さん(64)=同区=は重度のニコチン依存症のため、治療を中断した。多いときには毎日約50本。歩くと息苦しく、疲れやすい。3年前「肺気腫」と診断された。何回か禁煙に失敗した後、樹のはなクリニックを受診したのは昨年8月だった。
 初回診療から1年たてば健康保険を使った禁煙治療に再挑戦できる。奈良岡院長の勧めもあり、今年9月から錠剤での禁煙治療に取り組んだ。
 今春保険適用になったこの薬は、脳の神経細胞にあるニコチン受容体と結合してニコチンを遮断すると同時に、満足感につながる神経伝達物質ドーパミンを少量放出、たばこへの切望感を減らす。服用8日目から禁煙。これまでと違って、手元にたばこがあっても吸いたいと思わない。禁煙成功への手応えを感じた川嶋さんは、家の灰皿を片付けた。
 禁煙治療に詳しい大阪府立健康科学センターの中村正和部長は「錠剤は、パッチより禁煙成功率が高いという海外の研究もあり、自分に合っているのはどれか選べばよい。ニコチン依存症である喫煙を意志の力でやめるのは難しいと思う人は、ぜひ医療機関にかかってほしい。治療法を選ぶことが可能になっている」と話す。 (2008/11/11)

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