第3部「現場からの声-3」
ミス、有責とは限らない
記者の視点に異議

 「札幌在住の医師」という読者からメールが寄せられた。
 〈この記事は、意図的に読者を誤誘導するために書かれたと思います〉
 医療現場で妻を亡くした奈良県の会社員高崎晋輔さん(26)の苦悩を伝えた記事への感想。記者の“目線”に対する批判の言葉が並んでいた。
 2006年8月、晋輔さんの妻実香さん=当時(32)=は同県の大淀町立大淀病院にお産のため入院中、意識を失った。別の病院に搬送され、長男を無事出産したが、自身は1週間後に死亡。晋輔さんは翌年5月、大淀病院の対応に落ち度があったとして提訴した。
 記者は、インターネットの掲示板に医療事故被害者を中傷する書き込みが相次いだことや、法廷で病院側が遺族を批判したことなどを盛り込み、晋輔さんが医療不信を募らせていく経緯をつづった。
 「医師」は問う。
 〈診断を間違えていることと、それが法的に責任があるかどうかとは別問題です。どんな医者でも診断を誤ることはありますが、それがすべて有責なわけではありません。記者さんは、その点ご存じなはずと思いますが、このような記事構成にしたのはどうしてでしょうか。読者の誤解を招く行為だと思います〉
 大淀病院は産科を休診し、地元のお産事情が悪化。記事の結びは、晋輔さんの次の発言だった。
 「お産の場だけでなく、法廷でも妻の命が粗末に扱われ、冒とくされた。医療崩壊を招いたのは僕らだというんですか」
 記者への質問は続く。
 〈このご主人が「妻の命が冒とくされた」と主観的に感じることはあるでしょう。でも、それを記事におこすに当たっては、何か考えるべきことがないでしょうか〉
 考えるべきこととは…。メールで尋ねると、返信があった。
 〈ご遺族の発言そのままを掲載することは仕方がないのかとも思いますが、マイナス評価を含んだ表現を用いることには慎重であっていただきたいと思います。「冒とく」との表現を読めば、読者は「そうか、法廷で冒とく的なことを言われたんだ」と受け取るわけです〉
 そして、〝医療崩壊〟について―。
 〈崩壊の原因は、訴えるべき場面で訴えた遺族ではありません。そうではない場面でも訴えなければいけないと思わせ、煽り立てた人々です〉

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