出産事故に補償制度創設
過失なくても3千万円
紛争防止と原因究明に期待
 出産事故で脳性まひの赤ちゃんが生まれた場合に、お産の施設側に過失がなくても総額で3千万円の補償金が支払われる「無過失補償制度」が、来年1月1日以降の出産に適用される。赤ちゃんを救済し、家族と施設側との争いを避けるほか、脳性まひの原因究明を進め、再発防止につなげる目的があるという。
 
▽減らない発生
 日本産婦人科医会によると、脳性まひは出生1000人に2例程度の割合で発生。50年前とほとんど変わっておらず、有効な再発防止策がないのが現状だ。施設に過失がある場合もあるが、通常の出産でも発生する。医療技術の進歩で、体重が1000グラム未満の超低体重出生児も救命できるようになった近年は、むしろわずかに増加しているという。
 従来は過失の有無にかかわらず、ほとんどのケースで施設側が賠償を求められており、年間数十件は訴訟に発展しているとみられる。「訴訟になれば、6―7割は施設側が敗訴しているのでは」と、制度の創設にかかわった同医会常務理事の石渡勇医師は話す。
 紛争の多さは産科医敬遠の一因にもなっているといい「産科医療の崩壊を食い止めるためにも制度は必要」と石渡医師。
 都内に住み、脳性まひが原因で重い障害のある子を持つ岩城節子さんは「紛争を抱えながら障害のある子を育てるのは大変。補償があれば子どもの障害を受け入れ、育てていくための励みになる」と歓迎する。
 
▽未加入も
 制度では、産科の病院や助産所などお産の施設が、運営主体の財団法人日本医療機能評価機構を通じて民間の保険会社と契約。事故があった場合は保険金で補償する。施設が制度に加入していなければ補償は受けられない。
 同機構はすべてのお産の施設に加入を呼び掛けているが、 10月中旬の段階で加入を済ませたのは全国の約94%で、目標の100%には達していない。助産所に限ると、加入率は約86%でさらに低いという。
 また、脳性まひのすべてのケースが救済されるわけではない。出生児の体重が2000グラム以上かつ妊娠33週以上で生まれ、車いす生活を余儀なくされる身体障害者等級の1―2級と診断されることが条件だ。
 先天性の障害や出産後の感染症で障害が残った場合などは除外される。ただし、妊娠28週以上なら個別の審査で認められる場合もある。
 
▽結果公表がポイント
 お産施設からの補償申請を受け、機構は支払いの可否を審査する一方、脳性まひに至った詳細な情報を集め再発防止のためのデータを収集する。
 これまで紛争の場では、赤ちゃん側、施設側とも都合の悪い情報を出さない傾向があり、脳性まひ発生の原因究明は非常に困難だったという。医会の寺尾俊彦会長は「新たな制度下では、どこに問題があったか徹底的に調べ、再発防止につなげる」と話す。
 機構の調査で施設側に医学的な過失がないとの結論が出ても、赤ちゃんの家族は補償金を得られる。一方、過失が明らかになれば補償金のほかに施設から賠償金を得られる可能性も高くなる。医事評論家の行天良雄さんは「お産施設側に不利な調査結果が出た場合でも、機構がきちんと公表できるか。そこが紛争を未然に防ぐことができるかを決める大きなポイントだ」と話している。(共同通信 浅見英一) (2008/11/04)

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