第3部「現場からの声-2」
泣き寝入りするしか…
病院の姿勢に落胆、憤り

 〈記事を読んで気持ちが痛いほど理解できます。私もどれだけ精神的な侮辱を受けたことか…。無力、無能な人間は、泣き寝入りするしかないのでしょうか〉
 佐賀県伊万里市の会社員本告浩美さん(46)から届いた手紙は、怒りに満ちていた。
 がんの手術で夫を亡くし、病院を提訴した宮城県の主婦の心情をつづった記事への感想。
 浩美さんはその主婦の姿に、自分の体験を重ね合わせていた。2006年9月、夫の利光さんを亡くした。死因は慢性腎不全。60歳だった。
 〈まだまだ経緯があるのですが、うまく文章にできません〉
 手紙の続きを聞きたくて、記者は佐賀の自宅を訪ねた。
 「記事は私のケースと全く同じ。病院側は手に負えないと判断すると、マニュアル通りに逃げる。対話を拒否されたら、遺族は一体どこに行けばいいのでしょうか」
 遺影が飾られた居間で、浩美さんは肩を震わせた。
 利光さんの死から1年後、浩美さんはカルテのコピーを見て、驚いた。容体が急変し、意識不明となった06年6月の心電図の記録に、〝2004年6月〟と印字されていたからだ。
 「病院は機械の(日付の)設定ミスと説明しました。でも私は、急変に気付くのが遅れたのを隠そうと、(正常な)他人の記録を張り付けたのではないかと感じました」
 カルテの記録が本当かどうか、信頼を寄せていた看護師長に何度も尋ねたが、「答えてはいけないことになっている」の一点張り。相談先を求め、県や病院を所管する自治体などに足を運んだという。
 そして昨年3月、病院の弁護士から手紙が届いた。今後、質問はすべて当職までお寄せくださいと書かれていた。
 「5回ほど質問状を送ったけど、納得いく説明がないまま弁護士とのやりとりは一方的に打ち切られました。病院は逃げたんです」と浩美さん。
 しかし訴訟には踏み切れないでいる。「医療ミスだという確信がないから…」
 取材の翌日、浩美さんから短い手紙がファクスで来た。
 〈親身に聞いていただいたおかげで、主人にも私の気持ちが伝わったと信じます。やはり人情、心の問題だと思います〉

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