ラップ使ってアトピー治療
皮膚炎を劇的に改善
入浴後のスキンケア

  入浴後に患部に保湿剤をたっぷり塗り、さらにラップでくるむ―。ウエットラッピング法と呼ばれるこんな方法を使い、伊勢原協同病院(神奈川県伊勢原市)の小児科チームがしつこいアトピー性皮膚炎の改善で成果を挙げている。アトピー外来の木村和弘(きむら・かずひろ)小児科部長は「ステロイド外用薬による炎症治療と気長なスキンケアで確実に治ります」と話す。
 ▽バリア異常
 アトピー性皮膚炎は食物やダニなどによるアレルギーが原因とされていた。しかし木村部長は「アレルギーは考えられる原因の一つにすぎず、私の経験でも食事制限やダニ対策が必要な例はほとんどなかった」と指摘する。アレルギーにとらわれすぎると、かえって良くないというのだ。
 アトピー治療の第一人者、東京女子医大皮膚科の川島真(かわしま・まこと)教授も「アトピーはアレルギーだけでは説明がつかない。例えばストレスも悪化要因で、カウンセリングによる心のケアだけで改善する人もいる」とする。
 患者の皮膚は表面の角質層に含まれる水分が減ったドライスキン状態で、ダニなどのアレルギー物質や細菌、さらに引っかくことや汗などの刺激から皮膚を守るバリア機能が失われている。
 何らかの原因でかゆくなり皮膚をかくと、その刺激でバリアがさらに壊れ、余計かゆくなる―。この悪循環で炎症が悪化する。バリアの代用の膜を作るのがウエットラッピング法だ。
 ▽気長にスキンケア
 まず15分間入浴した後、肌がぬれているうちに患部に保湿剤をたっぷり塗る。その後、お湯でぬらした布やペーパータオルを当て、その上をラップでくるみ、2―3時間過ごす。炎症がひどいうちはステロイド剤も使い、治療後も保湿剤は洗い流さない。
 全身の場合は保湿剤を塗った後、ぬらした下着や靴下、手袋をつけた上にラップを巻く。入浴で補った皮膚の水分の蒸発を防ぎ、行き渡らせるのが目的だ。
 これを一日に1―2回繰り返し、10回程度で治療は終わる。「みんな驚くほど肌がきれいになります」とアトピー外来の村藤大樹(むらふじ・ひろき)医師。
 だが治療はそれからが重要だ。一見治ったように見えるが、ドライスキンは続いている。ステロイド剤ではかつて、症状が再燃するリバウンド問題で不信が広がった。これは炎症が消えたことを治ったと勘違いし、放置したためだ。
その後も1―2年間は、入浴後3分以内に患部に保湿剤を塗るスキンケアを続ける。軽症の場合は最初からこの方法でも十分。村藤医師は「ひどい症状を治すには有効な治療法だが、完治させるにはその後のスキンケアが大切」と強調する。
 ▽納得して治療を
 同病院では、アトピー外来が設置された2003年12月から今年3月までに349人が受診。このうち123人が重症で、3泊4日の教育入院で方法の詳しい指導を受けた。
 大半は地元の患者だが、青森県や沖縄県から治療に訪れる人も。また小児だけでなく、約3分の1は成人患者だ。
 初診時には肌の状態チェックだけでなく、約一時間かけてカウンセリングを実施。食事制限の弊害やステロイドの必要性を説明、従来のアトピー治療への誤解を解くことに努める。「納得して治療を受けてもらわないと、長期間のケアはできませんから」と村藤医師。
 治療は完全予約制。ただ治療に手間がかかる上、患者が殺到したことなどで対応しきれず、8月いっぱいは新しい患者の受け付けを停止している。


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