食道がん手術で負担軽減
胸腔鏡と腹腔鏡を併用
入院期間も大幅短縮 
 胸と腹、首を大きく切開し、患者の負担が非常に大きい食道がんの手術を、胸腔鏡と腹腔鏡の2種類の内視鏡手術を併用して行い、術後の痛みや感染症の危険を減らすことが可能になってきた。入院期間も大幅に短縮するなどメリットは多いが、普及には課題もある。
 
▽大きいダメージ
 食道がんは男性が女性より5倍程度なりやすく、罹患率や死亡率は50代後半から増える。飲酒やたばこが危険性を高め、熱い飲食物の取りすぎもよくないとされる。
 がんが浅い部分にとどまるなどのケースを除き、最も一般的な治療は、食道と周囲のリンパ節を切除し、胃などを使って食道の代わりにする外科手術。日本の水準は世界で最も高いが、食道は周囲に気管や心臓、肺のほか、重要な血管や神経も多く難易度は高い。
 「最もダメージが大きいのは胸部の手術で、肋骨を切り胸を広げる場合もある。胸壁も壊すため術後も痛みが残り、呼吸機能の低下、感染症など合併症との闘いが続く。何とかしたいと思った」
 こう話すのは、新しい手法で1996年以降、300人以上を手術した昭和大病院(東京都品川区旗の台)消化器・一般外科の村上雅彦准教授。従来の手術で対象となる食道がんは、基本的にすべてこの内視鏡手術でも可能という。
 
▽カメラで高精度に
 最大の特徴は胸部を大きく切開しないことだ。代わりに右胸の5カ所をそれぞれ15ミリ―7ミリ切り、長さ5―6センチの管(ポート)を挿入。ここからカメラや電気メス、鉗子を出し入れしながらリンパ節をすべて切除し、その後食道の端を切断する。
 「患部にカメラを近づけ、拡大画像をモニター画面で見ながら行うので、神経など避けるべき部分を見極められる。肉眼で確認しながらの開胸手術より精度は高い」と村上准教授。助手らも同じ画面を見るので安全性が高まるという。
 次が腹部の手術。上の方を約7センチ切開するほか、3カ所を5ミリほど切って器具を入れ、胃の周囲のリンパ節を処理した後、胃の一部を切除して残りを管状に伸ばし、食道の代わりを形成する。切断した食道は7センチの切開部分から外に出す。
 最後に、首の左下を約7センチ切開し、必要に応じて食道上部のリンパ節を切除した上で、胃で形成した食道の代わりを首まで引き上げてつなぎ合わせる。首の周囲は胸や腹部に比べ痛みや障害が起きにくく、切開しても患者の負担は比較的軽い。
 
▽合併症減る
 村上准教授によると、治療成績は従来の外科手術とほぼ同等。開胸して肋骨を切るなどの処置が不要なため、手術時間は従来より短い平均6時間ほどで、術後の痛みも格段に少ない。従来、人工呼吸器を外すのは数日後だったが手術直後に可能となり、10日―2週間と従来の約半分で退院できる。
 手術後、体内から外につながり、感染症の原因になりやすいチューブ類は、基本的に胸腔内の浸出液などを出す1本だけ。腹部のチューブや、胃や腸に栄養を入れるチューブは使わない。手術翌日に水分摂取、3日後には食事を始めるため、体力の回復も早く、感染症の危険は減るという。
 従来の手術は通常、80代以上には行わないが、昭和大では93歳の患者も手術を受けた。  村上准教授は「手術方法としては確立したが、技術の習得には時間がかかる。食道がんは胃がんなどに比べ手術件数が少ないため、経験を積んだ医師を効率的に増やしていく方法を考える必要がある」と話している。(共同通信 江頭建彦) (2008/09/22)

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