東大が医療倫理の集中講座
現場の人材不足に対応
 大学や病院が治療、医学研究などの倫理的問題を検討する倫理委員会の役割は増す一方だが、問題に適切に対処できる人材は不足している。東京大大学院の生命・医療倫理教育研究センターは、現場でのリーダー養成を目指した集中講座を開催。今年も定員を上回る応募があり、医師や看護師ら約70人が参加した。
 生殖医療や遺伝子治療などの進歩で生命・医療倫理の問題が増えたことなどを背景に、倫理委を設置する施設は増加。同センターの赤林朗教授らが300床以上の一般病院を対象に行った調査では、設置率は1996年の約24%が2002年には約58%に増加した。
 だが、委員の多くは生命倫理の専門教育は受けていないのが実情。とっさの判断を迫られる医療現場でも人材は不足している。
 こうした状況を受け、東大は5年前に同センターを設立。文部科学省も「医療倫理の人材育成をしているのはここだけ。医師や看護師は医療者の目線で考えがちだが、患者側の視点など多角的な見方を学んでほしい」と期待する。
 4日間の講座では、医療倫理学や法律の専門家が問題に対処する基本となる理論などを講義。小人数のグループに分かれた議論も行われた。
 京都大医学部の倫理委員長も経験した赤林教授は「患者の生活の質(QOL)を考える際、誰が見た価値観なのか見極めることが大切。医療従事者は『がんの末期だから』などと低く見る傾向があるが、必ずしもそうとは限らない」などと説明。
 「終末期の患者の延命治療をどう行うか」という事例でのグループ討論では「主治医が独断で決めず、別の医師にも意見を仰ぐべきだ」などの声が出た。
 特定の病気の患者の脳を調べる研究など、医師の申請内容を審査する「模擬倫理委員会」も実施。委員役の受講生が「患者に対しリスクの具体的説明がない」などと、申請した医師役の講師に指摘する場面もあった。
 受講生の一人、神戸市立病院集中治療部の看護師長伊藤聡子さん(48)は「『人工呼吸器を付けるべきか』など、倫理的判断が迫られることは日常茶飯事。後で『あれで良かったのか…』と悩むことは多いのに、忙しすぎて振り返ることなく時間が過ぎていくのがジレンマだった。同僚と講義の知識を共有したい」と話していた。 (2008/09/09)

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