扁桃摘出で腎症を“完治”
ステロイドの集中投与併用
早期の患者に高い有効率
 進行すると透析や臓器移植が必要となる慢性の腎臓病、IgA(免疫グロブリンA)腎症。この病気を、腎臓とは別の場所の炎症が引き金になった「病巣感染」ととらえ、感染源の主体と考えられるのどの扁桃の摘出と、ステロイド剤の集中投与の組み合わせで治療する方法が高い効果を上げている。早期であれば“完治”も可能という。
 
▽20年前に考案
 腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の塊が約100万個あり、尿をつくっている。IgA腎症はここに粘膜の防御を担うタンパク質IgAがたまって炎症が起きる病気で、多くは数十年かけてゆっくり腎機能が低下する。
 自覚症状が少ないため、腎不全になって初めて見つかるケースもあり、国内の透析の原因では糖尿病性腎症に次いで多い。仙台社会保険病院(仙台市)の堀田修・腎センター長は「一部を除き治らないとされ、治療は進行を遅らせるのが主体だった」と話す。
 堀田さんが扁桃摘出とステロイド集中投与を併用した治療を考案したのは20年前。患者の血尿が咽頭炎をきっかけに悪化することや、患者の多くで扁桃に大小の膿の塊が見られることに気付いたのがきっかけだった。
 「腎臓にIgAを大量に“供給”する元が扁桃だと考え、これを断つとともに、乱れた免疫機能を免疫抑制剤のステロイドでリセットすることを考えた」と堀田さん。扁桃の摘出は、四歳以上であれば問題はないとされるという。
 
▽重い副作用なし
 堀田さんらの治療は、全身麻酔で左右の扁桃を摘出。ステロイドは効き目の強いメチルプレドニゾロンを3日間連続、点滴で投与し、4日間休むことを3回繰り返す。その後、比較的弱いプレドニゾロンの内服を、2カ月ごとに量を減らしながら最長1年続ける。
 ステロイドの点滴や内服は副作用が問題になりやすく、現在の投与量は何種類かの試行錯誤の結果だ。堀田さんの施設では「大腿骨頭壊死」など重い副作用は1例もないとしている。
 堀田さんによると、この治療法は国内の多数の医療機関で行われるようになったが、ステロイドの投与量は施設によって異なる。約1年半前に、仙台社会保険病院以外の約1400例を調査したところ、大腿骨頭壊死が4例報告され、いずれもステロイドを毎日投与したケースだった。
 
▽85%超が完治
 堀田さんらはこれまでに約1500例を治療。尿の異常が見つかってから治療開始までの期間が3年以内であれば、血尿とタンパク尿がともになくなり、寛解率は85%以上。患者の年齢も関係なかった。一方、5年以上経過すると寛解率は低下し、8年をすぎると50%を割った。
 「糸球体の毛細血管の炎症は、IgA腎症の発症や早期の進行を左右すると考えられる。扁桃摘出とステロイドによる治療で、この炎症は消滅するが、腎症が進行すると炎症以外の要因が大きくなるため、治療効果が期待できなくなる」。堀田さんは、検診などで病気を早期に見つけ、治療を始めることの重要性を強調する。
 治療後、血尿が残ったり再発したりする患者に対しては、扁桃以外の病巣感染を徹底的に調べる。鼻腔の突き当たりにある鼻咽腔の炎症や、根尖性歯周炎などが見つかり、こうした病気を治療すると腎症も完治する場合があるといい、堀田さんは歯科医師らとの協力も大切だとしている。(共同通信 江頭建彦) (2008/09/09)

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