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カテーテルで心臓にエタノールを注入して心筋の一部を壊死させる経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)という治療法が約10年前に始まり、閉塞性肥大型心筋症の重症患者の治療に効果を挙げている。2年前から保険適用も認められ、国内でも200人以上の患者が治療を受けている。
▽出口を広く
治療法は通常の心臓カテーテルとほぼ同じで、細い管状のカテーテルを太ももの付け根の血管から心臓の冠動脈に通し、高濃度のエタノールを注入する。すると、閉塞性肥大型心筋症のため異常に厚くなっていた心筋組織はエタノールによって壊死。狭くなっていた左心室の出口部分が広がり血流が改善、心臓への負荷が軽くなる。
冠動脈は細かく枝分かれしているため、目標の血管は超音波検査などで特定。小さな風船を血管内で膨らませてエタノールが余計な血管に流れるのを防ぎ、目的の部分だけを壊死させる。
国内で最も多くの症例を手掛けている日本医大病院(東京都文京区)の高山守正講師(循環器内科)は「家の中で動くだけでも苦しかった患者の多くが、治療後は息切れや胸痛などの症状がほとんどなくなるまでに改善する」と話す。
▽突然死も
肥大型心筋症は心臓の左右の心房と心室のうち、主に左心室をつくる筋肉が厚くなる病気。患者のほとんどは無症状だが、突然死を起こすこともある。進行すると体を動かしたときに呼吸が苦しくなったり、胸が痛くなるなどの症状が出る。
このうち閉塞性肥大型心筋症は、左右の心室の間にある心室中隔が特に肥大。左心室が収縮して血液を全身に送り出す際、過度に収縮して大動脈へ向かう出口部分を狭めてしまう。
運動をすると心臓は全身に送り出す血液を増やそうする。ところが閉塞性肥大型心筋症の場合は、心臓が強く収縮すると左心室の出口がさらに狭くなり、かえって血液が流れ出にくくなる。心臓に負荷がかかった状態が長期間続くと、心筋細胞が部分的に死んだり、肺に血液がたまる肺うっ血が起きたりする。
治療は、抗不整脈薬などの薬物で心筋の過剰収縮を抑えるのが基本。症状が軽いうちに治療を始めれば多くの人に効くが、薬で症状が軽くならない人も約2割いる
▽削らず焼く
薬が効かない場合には、肥大した中隔を削り取って血液の通り道を広げる中隔心筋切開切除手術や、ペースメーカーを使って心臓の収縮が進むタイミングをずらす治療法などがある。だが、同手術を多く手掛けた施設は少なく、ペースメーカーも効果が不十分な場合が少なくないという。
これに対してPTSMAは「外科的に削る代わりに、肥大した筋肉をエタノールで焼いてしまおうという考え方」(高山講師)。高濃度のエタノールを使うため治療効果はすぐに表れ、手術よりも患者の負担は軽い。壊死した組織は徐々に線維化して縮むので、治療後半年から1年ぐらい経過すると症状はさらに改善する。
治療は局所麻酔で行い、2、3時間で終わる。ただ、治療後は集中治療室での管理が必要で、ペースメーカーを埋め込まなければならないケースも、わずかだがある。治療の歴史が浅いため長期的な安全性も未確認だ。また、カテーテル治療の豊富な経験や、閉塞性肥大型心筋症に対する十分な知識が必要だという。
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