輸血事故に備え凍結保存
ウイルス感染の発見に
事後の検査も推奨
 輸血用の血液製剤の元になる献血の段階で、血液中のウイルスの有無を検査する技術は進歩しているが、現状では検査をすり抜けたウイルスが原因となった肝炎やエイズなどの感染症を完全に防ぐのは難しい。国などは治療前の患者の血液を凍結保存し、輸血後にも検査を受けることを強く推奨している。
 
▽3年で50例
 月に約100人が輸血を受ける北海道旭川市の旭川医大病院。輸血センターの一角では、過去二年間に輸血を受けた患者の血液がマイナス80度で凍結保存されている。
 「輸血前の検査時に採血した一部。輸血後に感染症発症などの問題が起きた場合に、原因を解明するのに利用する」と、紀野修一准教授。
 血液製剤を供給する日本赤十字社に、医療機関から輸血による感染が疑われると報告されたケースのうち、献血の血液からウイルスが検出されたのは2004年から3年間で約50例。約8割はB型肝炎ウイルス(HBV)で、ほかにはC型肝炎ウイルス(HCV)、E型肝炎ウイルス(HEV)などだった。
 日赤が03年から3年間、全国8施設で輸血を受けた全患者計約2100人に実施した調査でも、輸血によるHBV感染と判断したケースが1例あった。
 
▽救済証明に
 国は05年3月、2年間を目安とする凍結保存を指針で定めたが、1999年から保存を始めていた旭川医大は、こんな例を経験した。
 2003年から04年にかけ、多発性骨髄腫の治療で輸血を受けた女性患者。05年9月の検査でHBV陽性との結果が出た。紀野准教授らは、輸血前の血液や治療中の定期検査で保存していた計12の血液サンプルを詳細に調べた。
 女性は輸血以前から、通常の検査では見つけるのが難しい潜在性のHBV感染で、輸血は無関係だったことが判明。輸血と同時期に受けた抗がん剤の大量投与や造血幹細胞移植によって、HBVが活性化したとみられ、輸血後に初めて感染が分かった。
 「輸血以外にも院内感染、院外の接触感染などさまざまな原因を考えなくてはならず、輸血前血液の保管は非常に重要だ。輸血が原因だった場合に、被害者救済制度を適用するための証明にもなる」と、紀野准教授。
 
▽全員に郵便で
 保存血液が生かされるのは、輸血後の検査があってこそだ。2―3カ月後に行うのが通常で、輸血前と同様にHBVやHCV、エイズウイルス(HIV)を調べる。
 旭川医大病院では05年秋以降、輸血を受けた全員に2カ月後をめどに郵便を出し、検査を受けるよう要請している。同病院で検査を受けたのは約4割で、さらに調べると、残りの人のうち約8割もかかりつけ医などで検査を受けていたという。
 厚生労働省研究班と日本輸血・細胞治療学会が06年度に約1350施設に実施した調査では「原則として全患者に輸血後検査をしている」との回答は約4割。
 07年度の調査で、検査を受けてもらうための取り組みを尋ねたところ「輸血の同意を得る際に書面を渡す」(28%)「退院時などに書面を渡す」(17%)が多かった。
 旭川医大のように「適切な時期が来たら患者や主治医に通知している」という施設は10%以下。紀野准教授は「方法は地域の実情に応じていろいろあると思うが、輸血時や退院時ではなく、あらためて伝えるのが効果的ではないか」と話している。(共同通信 江頭建彦) (2008/08/19)

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