透析26年「生活変える」
隠れた病、静かに進行
慢性腎臓病を知って 
 自覚症状のないうちに静かに進行し、気付いた時には透析が必要な状態になることも珍しくない腎臓の病気を「慢性腎臓病(CKD)」と名付け、早期発見や治療に結びつけようという動きが日本でも広がってきた。最新の推計では、国内の患者は1300万人を超えるとされる。国民病ともいえるCKDの何が怖いのか。患者や医療の現状は―。
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 兵庫県在住の宮本高宏さん(49)は月、水、金曜の週3回、仕事を早めに切り上げ、電車と車を乗り継いで姫路市内のクリニックに向かう。働かなくなった腎臓に代わり血液を浄化する透析治療を受けるためだ。約五時間の治療が終わるのは午後10時半ごろ。この生活が始まって26年近い。
 
▽入院中に退職願
 宮本さんは大学2年だった1979年の1月、かぜをひいたときのような体のだるさを感じ、近くの病院を受診した。タンパク尿や尿潜血があり、医師は「明らかに腎炎。療養が必要です」。
 病気は慢性化し、入院は10カ月に及んだが、何とか復学して夢だった小学校の教諭に。だが初めての運動会に向けた練習に忙しかった82年9月、再び意識が遠のく感覚に襲われた。全身にむくみがあり、既に腎不全の状態。薬の治療では効果が上がらず、透析が始まった。入院中に退職願を書いた。
 「何で自分だけがこんな目に遭わなければならないのかという思いと、人生が終わってしまったような思い」と、宮本さんは当時を振り返る。最初の診断の約1年前にも同じような体のだるさを覚えたといい「受診のきっかけはあったのかもしれない」と話す。
 
▽「喫緊の課題」
 慢性腎臓病(CKD)は2002年に米国で提唱された概念。宮本さんのような腎炎だけでなく、糖尿病、高血圧などさまざまな原因で腎臓の障害や機能低下が3カ月以上続けば診断される。病気の原因は問わず、専門医でなくても判断できる検査指標で患者を広く拾い上げていこうとする考え方だ。
 透析が必要になる場合もある腎不全は、5つに分類されるCKDの病期(ステージ)では最も進行した状態。秋沢忠男・昭和大医学部教授(腎臓内科)は「初期は尿や血液の検査をしないと発見できることは少ない。進行しないと自覚症状がないケースが多く、専門医にかかったらいきなり透析、という患者もいる」と説明する。
 昨年末時点で国内の慢性透析患者は約27万5千人と、20年前の3・4倍。血液透析だけでも、2010年には国内の患者が世界の患者の約7分の1を占めると予測されている。厚生労働省の検討会は今春、CKD対策を喫緊の課題とする報告書をまとめ、国も本格的な対策に乗り出したが、背景には透析患者の急激な増加がある。
 
▽受診が重要
 患者団体「全国腎臓病協議会(全腎協)」が、透析を受けている会員約70人に実施したアンケート。症状の自覚から受診まで1カ月以上空いた人がほぼ半数に上り、ほとんどは「大したことないと思った」が理由だった。初めて腎臓病と診断された時には腎不全だった人も約4分の1いた。
 秋沢教授は「CKDは悪化のスピードを抑制したり、程度が軽ければ腎機能を元に戻したりすることも可能になってきた」と、受診の重要性を強調する。日本腎臓学会は、約1330万人と推定される国内の患者の半数近い、約590万人に薬の投与など積極治療が必要だとしている。
 全腎協の副会長として透析医療の充実やCKD対策を訴える宮本さん。治療を始めたころに比べ透析技術は格段に進歩し、日本の患者の死亡危険度は欧米の数分の1とされるが「透析はそれまでの生活をがらりと変えてしまう。われわれと同じ思いをする人をこれ以上、増やしたくない」。(共同通信 江頭建彦)(2008/08/12)

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