「孤立する患者たち-3」
真相求め看護師に手紙
ミス疑い提訴、見えぬ出口 
 女性看護師の手紙からは、はっきりと〝警戒心〟が読み取れた。
 〈(医師の)指示内容等に関する質問にはお答えすることができません。ご質問がございましたら病院又は医師に連絡いただきますよう―〉
 彼女なら真相を打ち明けてくれるかも…。かすかな希望は砕かれた。
 宮城県の主婦伊藤典子さん(59)の夫智幸(ともゆき)さんは2003年7月、宮城県立がんセンターで直腸がんの手術を受け、3日後に急死した。50歳の若さだった。
 「死因は不明」。病院は、そう説明した。
 だが診療記録を読んだ典子さんには、疑問ばかりが残った。痛み止めとして、麻酔薬を過剰に投与した直後に副作用で容体が急変したのでは…。未明に目が覚め、資料を読み返す日々が続いた。
 智幸さんの死から約1年。病床で麻酔投与した女性看護師の住所を調べ、筆を執った。
 〈本当のことを教えてください〉
 それまで疑問点をまとめた質問状を院長に送るなど、何度も病院側に説明を求めたが、納得できる回答はもらえなかった。手紙を書いたのは、すがる思いからだった。
 「(看護師)本人が傷ついている。直接連絡するのはやめてほしい」。看護師からの返信が届いた数日後、典子さんは病院からそう通告された。
 「ストーカー扱いされてる…」。みじめな気持ちになった。
 それから約3カ月後の04年12月、病院を運営している宮城県を相手取り提訴した。
 「ご主人に投与された麻酔薬のドルミカムは、痛み止めとしての使用が本来認められていない。ミスの可能性が高い」。つてをたどって相談した医師からそう言われ、勝てると思った。
 裁判を通じ、新たな事実が判明した。担当の麻酔科医は、智幸さんをじかに診察せず、自宅から電話で薬剤投与を指示していたというのだ。
 それでも県側は「診療に問題はない」との姿勢を崩さなかった。
 提訴から3年半。判決の目途は立たず、訴訟費用は300万円近くに上っている。
 「時間と労力を費やし、醜い争いを続けただけ…。うんざりです」。典子さんはため息をついた。
 宮城県の県立病院課は記者の取材に、ファクス1枚を送ってきた。「訴訟中であり回答は控える」とだけ記されていた。
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