生理痛を飲んで鎮める
子宮内膜症に低用量ピル
国内でも保険適用
  日本人女性の4人に1人が悩まされた経験があるという、痛みのひどい生理痛。ほとんどが子宮内膜症のせいだとされる。欧米では治療に低用量の経口避妊薬ピルを使うのが一般的。日本では導入が遅れていたが、今年になって内膜症に伴う月経困難症治療専用の薬として保険適用が認められ、国内の製薬企業による製造、販売が7月に始まった。
 
▽損失1兆円
 子宮内膜症は、子宮内膜によく似た異常な組織が子宮以外の骨盤、腹膜などで増殖する病気。月経周期に合わせ、はがれて出血する組織なので、どこにあっても同じように出血する。
 問題は、子宮と違って血の出口がない部位で出血するため、血豆や炎症、癒着ができてしまうことだ。これが激しい痛みを引き起こす。
 痛みのひどい女性は家事や仕事を休むなど、日常生活に支障が出ることも少なくないといい、厚生労働省の研究班が2000年に行った試算では、こうした理由で発生する社会的な損失は年間約1兆円に上るとされる。
 詳しい原因はよく分かっていないが、女性ホルモンの1つであるエストロゲンや排卵が関係しているとみられる。
 
▽欧米では標準薬
 子宮内膜症の治療には手術や薬剤投与が必要で、日本ではGnRHアゴニストと呼ばれる薬が広く使われている。月経そのものを止めてしまい、異常な膜組織の増殖も抑える方法。だが愛育病院(東京)の安達知子産婦人科部長は「切れ味(効き目)はするどいが、重い副作用が出る可能性がある」と指摘する。
 体を閉経に似た状態にするため、骨量の減少や動脈硬化など更年期障害と同じような症状が出るといい「6カ月以上は続けて使用できない」と安達部長。一方、服用をやめると約60%の人で症状が半年以内に再発してしまう。
 「欧米ではかなり以前から、低用量のピルで治療するのが標準的だった」と話すのは、患者団体「日本子宮内膜症協会」(事務局・大阪市)のいぬい益美代表。ピルは体を妊娠状態に近づけて排卵を抑制し、エストロゲン量のバランスを取る。
 GnRHアゴニストと同様、異常組織の増殖は抑制するが、長期間使用しても深刻な副作用は起きないという。ピルはもともと避妊のための薬だが「服用を停止すれば妊娠は可能で問題はない」と、いぬい代表は説明する。
 
▽科学的根拠
 低用量ピルが本当に効くのかどうかについて、科学的な研究はほとんどなかったが、鳥取大医学部の原田省准教授らは、薬理効果のない偽薬(プラセボ)を用いた精度の高い臨床試験を国内で行い「効果あり」とする論文を発表。世界で初めて科学的根拠を示した。
 対象は子宮内膜症の18歳以上の患者で、月経4周期分に当たる112日間、49人をピルで治療し、別の47人には偽薬を投与。痛みによって家事や仕事にどの程度影響が出たかや、鎮痛剤を併用した頻度を調べ、苦痛の大きさを数値化して比較した。
 数値が低ければ、治療効果があったことになるが、服用開始から1カ月後、ピルで治療したグループで数値は明らかに低くなった。
 原田准教授は「一年間の長期服用でも重大な副作用はなく、よりよい効果があった。治療の第一選択薬にするべきだ」と話している。
 新薬は「ルナベル配合錠」(ノーベルファーマ)で、1日1錠を21日間服用し、その後7日間休薬する。(共同通信 浅見英一)(2008/08/05)

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