「仙骨神経症候群」を提唱
肛門や骨盤に慢性の痛み
チーム医療で治療に成果
  肛門や骨盤付近の痛み、排便障害や便の漏れ、腰痛といった複数の症状が長い間続く。原因が分からないため十分な治療が受けられず、病院を転々…。大腸肛門疾患が専門の高野病院(熊本市)はこうした病気を「仙骨神経症候群」と呼ぶことを提唱している。症状に応じてさまざまな治療法を組み合わせ、チーム医療で成果を挙げている。
 
▽自殺考えた人も
 「男性なら前立腺炎、女性なら婦人科系の病気と診断されたり、整形外科でも原因が分からなかったり。精神科の病気を疑われた人も少なからずいる」。こう話すのは、これまでに約2400人を診てきた同病院会長の高野正博医師。
 昨年1年間にこの病気と診断した462人の中には、医療不信や将来への不安で自殺を考えたという人が7人いたという。
 背骨の下にあり骨盤の中央に位置するのが仙骨。ここから出ているのが仙骨神経で陰部神経につながり、肛門の運動や知覚に関係する。直腸に関係する骨盤内臓神経も同じところから出ている。
 苦しむ患者に共通していたのは、肛門から指を入れて行う直腸指診で、仙骨神経や陰部神経に沿った痛みとしこりがあることだった。しこりの部分に触れると、皆が「いつもの痛みと一緒です」と訴えたという。
 
▽複数の症状合併
 高野さんはこれまでの症例の蓄積から、同症候群は多くの場合①痔(じ)とは異なる肛門の鈍い痛み②括約(かつやく)不全による便やガスの漏れ③便が出にくかったり、残った感じがしたりする排便障害④腹痛やおなかの張り⑤腰痛や下肢のしびれ―の5症状のうち、いくつかが合併して現れると定義した。
 「便の漏れと排便障害は一見、逆のように思われるが、1人の患者で同時に起きることもある。肛門と直腸の神経は知覚と運動をつかさどっているので、両方が障害を受ければさまざまな症状が出て当然」と高野さん。症状が1つだけという人は患者の約2割で、症状が四つから五つ重なるという人も約2割いた。
 患者の年齢は10代から高齢者まで幅広く、平均は50代後半。女性の方が多いという。
 
▽80%に効果
 治療方針は詳細な問診の上で肛門、直腸の運動や感覚、腰椎(ようつい)などを調べる計16種類の検査を症状に応じて行い、決定する。その後、便の硬さや腸の運動を調節する薬の投与、括約筋を活性化する低周波治療、心理療法や神経ブロックなどさまざまな方法を組み合わせて治療するが、大きな位置を占めるのが理学療法の一種、バイオフィードバック訓練だ。
 これは肛門にセンサーを入れるなどして肛門の圧力や筋電図を把握。モニターに映る波形で肛門を締める感覚を患者につかんでもらい、括約筋の強化や直腸の動きの改善を図る方法という。「感覚が低下している場合は低周波などで刺激を“補強”しながら行う」と高野さん。
 こうした総合的な治療で、半年以内に症状が消えた患者は五症状それぞれ約60―70%で、全体では約80%で効果があった。痛みの再発は約20%にみられたが、大半は継続治療で再び改善したという。
 同病院では2005年秋に仙骨神経症候群の患者会も発足。約120人が参加し、勉強会や意見交換会が定期的に行われている。運営を担当するコーディネーターの吉川敦子さんは「自分だけが特別ではないということを認識できる場になっており、治療や生活にもいい結果を生んでいる」と話している。(共同通信 江頭建彦)(2008/07/29)

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