「孤立する患者たち-1」
白衣の内側に防犯ブザー
医師ら“モンスター”警戒
 大部屋の病室に怒声が響き渡った。  「高温のシャワーでやけどさせた」「看護師が虐待した」
 今年1月、埼玉県の春日部市立病院。声の主は、90代の女性患者に付き添う60代の息子夫婦だった。激高は収まらず、怒鳴り声は30分以上も続いた―。
 粂原藤一郎事務部次長(53)によると、患者は2006年3月に入院。治療をめぐる考え方の違いがきっかけとなり、息子夫婦がスタッフにクレームを付け始めた。次第にエスカレートし、今年に入ってからは事実無根の中傷を繰り返すようにまでなったという。
 粂原次長は「医師や看護師から『怖い』『かかわりたくない』との訴えが相次いだ」と話す。
  ×  ×  ×
    千葉県船橋市にある同市立医療センター。同病院の救命救急センターでは、医師と看護師が防犯ブザーを白衣に忍ばせて勤務に就く。
 院内には、U字形の金具に木製の柄が付いた暴漢制圧用の「さすまた」3本を常備している。
 06年度、同センターで起きた患者による暴言・暴力、恐喝などの被害は計17件。4年前に比べると3倍になったという。入院中の男性患者が「治療など受けたくない」と大声を出し、手に負えないと判断した病院側が、警察に通報したケースもあった。
 「院内で安全な場所を確保するのが年々難しくなっている」と池田勝紀医長(35)。
  ×  ×  ×
 全日本病院協会によると、昨年1年に全国約570の病院で、職員が暴言を浴びせられるなどの被害を経験。調査を担当した練馬総合病院の飯田修平院長(62)は言う。「誇りを踏みにじられ、われわれの我慢は限界に達している」
 3月、春日部市立病院の夫婦に対し、裁判所が虚偽の言動などによる医療妨害行為を禁じる仮処分決定を出した。その後、夫婦が院内で騒ぐことはなくなったという。
  ×  ×  ×
   「モンスター患者」
 医師らに暴力をふるったり過剰な要求を突き付けたりする患者や家族をそう呼び、迷惑がる風潮が医療現場で広がっている。一方、診療に疑問を抱き説明を求める患者側から「自分たちは不当にクレーマー扱いされている」と嘆く声が出ている。戸惑いが渦巻く現場を歩いた。
感想をお寄せください
   この連載に対する感想やご自身の体験を「医療漂流」取材班にお寄せください。ファクスは03(6252)8761、電子メールはhyoryu@kyodonews.jp (2008/07/22)

トップページへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2008 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved