|
銅の吸収を阻害 ベンチャー企業が開発 |
|
銅が体内に過剰に蓄積し、肝臓や脳などに障害を与える遺伝性のウィルソン病。治療や発症予防は可能だが、できるだけ早期に始め継続する必要がある。国内の従来の治療薬とは異なり、銅の吸収を阻害する新薬をベンチャー企業が開発。4月に発売し、治療の幅が広がった。 ▽早期診断
銅は生命維持に欠かせない微量元素のひとつで、食事で取り込まれる。多すぎると毒性を示すが、普通は肝臓から胆汁中に出て便になる。この働きに障害が起き、肝臓や脳、腎臓に大量に蓄積してしまうのがウィルソン病だ。肝障害から肝硬変、肝不全と進行して死に至ったり、言葉の障害や精神症状、角膜に特徴的な輪がみられたりする。国内には3000―4000人の患者がいるとみられるが、1990年代前半の厚生省(当時)研究班の調査で把握されたのは700人ほどだった。 日本人の発症のピークは12歳前後。東邦大の青木継稔学長(小児科学)は「小さい時に血液検査を機に発見されることもあるが、無症状のまま成長したり、症状はあっても診断が付かなかったりすることも少なくない」と話す。 診断には、銅と結合するタンパク質の濃度を調べる血液検査や、尿中の銅の排せつ量を調べる方法などがあり、青木学長は早期発見の重要性を強調する。 ▽副作用小さく
治療は薬の服用と、銅を多く含むレバーなどの食事制限で、一生続ける必要がある。薬は銅の排せつを促すキレート剤のペニシラミンや塩酸トリエンチンが使われているが、主にペニシラミンで血液や腎臓の障害など副作用があり、服薬を中止しなければならないケースもあったという。1月に承認され、4月に発売されたのはカプセル剤の「酢酸亜鉛水和物」(商品名ノベルジン)。腸が銅を吸収するのを防ぐ働きがある。青木学長は「諸外国では第一選択薬。従来の二剤に比べ効果が出るのにやや時間はかかるが、副作用の発現率は低い」と話す。 患者団体「ウイルソン病友の会」会長の小峰恵子さん(55)=静岡県=も「これまでは、食事の3、4時間後に飲み、その後1、2時間は次の食事ができなかったが、亜鉛製剤は服用時間の幅が広くなり、1回の量も1カプセルと減った。一生のことなのでメリットは大きい」と言う。 ▽普通の生活を 亜鉛製剤を開発したのは、市場規模などから既存の製薬会社が手掛けることの少ない薬の開発を掲げ設立された「ノーベルファーマ」(東京)。設立5年、社員50人あまり。塩村仁社長は「国内での治験には不安もあったが、対象の37人は早い段階で集まった」と話す。 小学2年の時にウィルソン病と診断され、その後認可されたペニシラミンを40年以上飲み続けてきたという小峰さんも治験に参加した。「日本での開発は期待薄だと医師からも言われてきた。不安もあったが、海外では広く使われてきた亜鉛製剤の良さを実感している」 亜鉛製剤も、承認に当たり全症例を調査する条件が付けられた。副作用は胃の不快感などが報告されているが、頻度は比較的少ない。小峰さんは「症状が出る前にウィルソン病だと診断がつき、この薬も使って普通の生活が送れる人が増えればうれしい」と話す。 ウイルソン病友の会は、電話0557(53)7360(平日の午後6―9時)。(共同通信 江頭建彦)(2008/06/17) +font> |