体内で吸収されるステント
血管を拡張、京都で開発
世界初、欧州で発売へ
  血管などの狭くなった部分を内側から広げ維持する「ステント」と呼ばれる医療器具。現在商品化されているのはステンレスなどの金属製だが、体内で自然に分解、吸収される新タイプの開発に医療機器会社「京都医療設計」(京都市、伊垣敬二社長)が成功した。
 脚などに使う製品が欧州連合(EU)の基準に適合したと認められ、今夏にもドイツなど一部の国で発売予定。欧米を中心に吸収型ステントの研究が進む中、世界初の商品化になりそうだという。
 
▽溶出型にも課題
 ステントは網状で筒形。心筋梗塞(こうそく)や狭心症の治療で心臓の冠動脈に使うケースがよく知られているほか、首や脚などの動脈、末梢(まっしょう)血管にも使われる。血管以外では、がんなどで狭くなった食道や気管の拡張にも用いられている。
 冠動脈の治療の場合、風船の付いたカテーテル(細い管)を挿入し、風船を膨らませて患部を広げる方法が中心だったが、再び狭くなる「再狭窄(きょうさく)」が起きることがありステント治療が加わった。
 それでも再狭窄が2―4割はあるため、細胞の増殖を抑える免疫抑制剤や抗がん剤を塗った「薬剤溶出ステント」が開発された。これにより再狭窄率は1割以下に低下したとされる。
 しかし、薬剤溶出型にも課題がある。ステントを使用する場合は、血栓を予防するために抗血小板薬を併用しなければならないが、溶出型は金属だけのタイプに比べ薬を長い間使う必要がある。抗血小板薬には血液障害などの副作用が報告されており、国などは慎重な使用を求めているほか、安全性や有効性を検討する研究も行われている。
 
▽徐々に分解
 伊垣さんらが体内吸収型の研究を始めたのは1990年代前半。金属型には限界があると考えたのがきっかけだったという。「再狭窄は通常、ステントを入れてから半年以内に起きる。広げた状態をこの期間、維持できれば血管は固定されるが、金属はその後も血管に(細胞増殖につながる)刺激を与え続ける」と、伊垣さん。
 開発した製品の素材はポリ乳酸という生体分解性のポリマーで、骨を接合するピンの材料などとして医療分野でも使われている。同社は分子量などを工夫し、血管組織への適合性と強度を併せ持つことに成功した。
 長さは3・6センチ、直径は5―8ミリの四種類あり、主に下肢の血管が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症の治療に使う。血管内で水分で、徐々に水と二酸化炭素に分解されるが、半年程度はステントの形を維持。最終的に2、3年で吸収されるという。
 
▽将来は日本でも
 同社は2003年からドイツとイタリアで計90人に臨床試験を実施。EUの第三者委員会が安全性を評価し、域内で流通可能な「CEマーク」を昨年秋に取得した。
 「金属アレルギーの人や、成長途中で金属ステントが使えない子どもらにも使え、再狭窄が起きても、もう一度治療が可能」と同社。発売後しばらくは使用施設を限定して市販後調査を行う一方、冠動脈用でもCEマークを取得したいとしており、将来は日本での販売も目指す意向だ。
 伊垣さんによると、ポリ乳酸を使用したステントは薬を混ぜることが容易で、薬剤溶出ステントの土台としても有望。今後、さらに次世代のステント開発も本格化しそうだ。(共同通信 江頭建彦)(2008/05/07)

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