親知らず抜歯には個人差
長時間手術やまひの恐れも
十分説明聞いて治療を
 痛みや顔の腫れから、できれば早く済ませたいと思う親知らず(智歯)の抜歯。歯の状態は個人差が大きく、手術の難易度もまちまち。長時間かかったり、神経の損傷でまひなどが残ったりする場合もわずかにあるため、十分な説明を受け、リスクも知って治療を受けることが大切だ。
 
▽甘かった認識
 「これが原因でかみ合わせが悪い。抜きましょう」。派遣社員A子さん(42)は福岡市に住んでいた昨年夏、検診に訪れた自宅近くの歯科医にこう言われ、左下の智歯を抜く手術を受けた。
 「過去に2本抜いていたので気楽だった」というA子さん。だが、抜歯は2時間半たっても終わらない。途中で2度目のエックス線検査。ほかの患者の治療も入り、医師は行ったり来たり。結局「一部しか取りきれませんでした。また来てください」と告げられた。
 3カ月後、A子さんは転居した都内で総合病院の歯科口腔外科を受診。診察や歯全体のエックス線検査の後、歯ぐきを切開することや、まれにしびれが残る可能性などを文書も使い説明された。
 「抜歯は立派な手術ですね。認識が甘かった」とA子さん。次の受診で抜歯は順調に終わった。担当医は「智歯が奥のあご骨に引っ掛かりうまく抜けなかったのでは。骨を削りすき間をつくるなど、ケースごとにさまざまな手技を使い分ける必要がある」と説明する。
 
▽虫垂炎並み
 大人の歯は通常、12、3歳ごろまでに前歯から第2大臼歯まで計28本生える。これに遅れて出るのが智歯で「第3大臼歯」とも呼ばれる。
 智歯は退化途上の歯とされ、生えるかどうかや本数には個人差がある。上、下ともまっすぐに生え、粘膜の上に出ていればあまり問題ないが、横向きや斜めで第3大臼歯に当たったり、一部だけ出たりすると、虫歯や「智歯周囲炎」という炎症、顎関節障害の原因になり、抜歯が必要になることが多いとされる。
 粘膜や筋、骨を処置する抜歯手術は「虫垂炎(盲腸)くらいの侵襲度」と説明するのは、佐々木歯科・口腔顎顔面ケアクリニック(千葉県館山市)の佐々木研一院長。
 佐々木さんによると、智歯は位置や向きだけでなく、根の大きさや形も多彩。エックス線では把握できない場合もある。年を取るにつれ骨が硬くなり、歯と骨との癒着も起きやすくなるため手術の難易度、リスクとも大きくなる。
 
▽軽く考えないで
 最も注意を要するのは、下の智歯を抜く際の神経の損傷。根のわずか2・7ミリ(平均)先を通る「下顎管」の中にある神経を、歯を分割する際に切断したり、乱暴な抜歯で傷つけたりすると、修復手術が必要になり後遺症が出ることも。あごの骨の内側を走る舌神経を傷つけることもある。
 「神経に関する知識を持った上で、智歯の状態を正確に把握し、確実な抜歯計画を立てることが重要」と、佐々木さん。
 最初から智歯と神経が接している場合は、抜歯で神経が露出し、唇や顔にしびれやまひが出やすい。多くは1週間ほどで回復するが、2、3カ月かかる場合もあり、リスクは数%だという。
 心臓病や高血圧などの人、骨粗しょう症薬の一種を服用中の人なども注意が必要。佐々木さんは「診察や検査で抜歯前に数回通ってもらうこともある。怖がる必要はないが、あまり軽くも考えないで」と話している。
 智歯は近年、第2大臼歯抜歯後の移植や、組織の一部を利用した再生医療研究にも利用されており、抜歯に当たり説明する歯科医も増えている。(共同通信 江頭建彦) (2008/04/22)

トップページへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2008 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved