乳がんを遠隔診断
医師不足でも検診可能に
費用、互換性に課題
 乳がん検診で導入が進む乳房エックス線撮影(マンモグラフィー)のデジタル画像を、離れた場所の専門医が診断する厚生労働省の遠隔診断支援モデル事業が動きだした。画像を見て異常の有無を判定する「読影」は、医師2人が行うことになっており、経験を積んだ医師を確保しにくい地域でもマンモ検診ができるようにという狙いだ。
 
▽安心感
 全国7カ所の支援病院の1つに選ばれた鹿児島市の相良病院は、2007年11月からシステムの本格運用を始めた。
 同市内の鹿児島厚生連病院、約20キロ離れた鹿児島県加治木町のフィオーレ第一病院と専用回線で結び、月に計約300人分送られてくる検診画像を診断、所見を付けて返信する。
 読影は、院長補佐で「検診マンモグラフィ読影認定医」の相良吉昭医師が担当する。「郵便でのやりとりと違って封筒に入れて送る作業が必要なく、短時間で結果を返信できる」と言う。
 メリットは、依頼する側の方が大きい。以前は撮影が月数件だったフィオーレ第一病院は、システム運用を機に検診を本格化し、現在は月に約50人分の読影を依頼しているという。
 同病院の医師は「前は院内の産婦人科や放射線科の医師が読影をしていた。乳腺の専門医に診てもらえると安心感がある」と、効果を実感している様子だ。
 
▽1億円
 マンモグラフィーには、画像をフィルムに直接焼き付けるフィルム式と、電子データで保存してモニターに映し出すデジタル式がある。
 遠隔診断に使う場合、フィルム式だと電子データに変換する作業が必要となる。デジタル式はこの作業は不要だが、画像を映し出すモニターのコントラスト(濃淡)を1枚ごとに調整しなければならず、読影にはフィルムより時間がかかるという。
 そこで、コントラストを自動的に最適化し、乳がんが疑われる部位に目印を表示するコンピューター検出支援装置を併用。「フィルムより短時間で済む」(相良医師)ようになったが、こうした最新設備につきものなのが高額の費用だ。
 厚労省によると、データの保存や送受信を行うサーバーや高精細モニター、専用回線などで、1グループ(支援病院と5施設程度の依頼病院)当たり約1億円。今回はモデル事業のため国が出したが、手軽に導入できる額ではなく普及のネックになりかねない。
 
▽検証が不可欠
 機器の違いによる互換性も課題の1つ。支援病院となった名古屋広小路クリニックのシステム構築を担当したイー・メディカルソリューションズ(名古屋市)は「メーカーが異なると画像データの大きさが異なり、画像が送れなかったり遅くなったり。調整に苦労した」と振り返る。
 また、読影料の設定は当事者同士に任されており、格安の“お試し価格”でスタートした相良病院は「収益が確保できないと拡大は難しい」と、採算ラインの見極めに頭を悩ませている。
 厚労省は08年度に、新たに支援病院3カ所を選ぶ予定。同省は40歳以上の女性は、2年に1回はマンモグラフィーと視触診による検診を受けるよう勧めており、遠隔診断システムが低迷するマンモ受診率を引き上げるきっかけになる可能性はある。
 一方で「国のがん対策はハコモノ優先」との批判もあり、今回のモデル事業も効果や課題の検証が不可欠となる。

支援病院7カ所は相良病院、名古屋広小路クリニックのほか、筑波メディカルセンター(茨城県つくば市)、聖マリアンナ医大病院(川崎市)、岐北厚生病院(岐阜市)、回生病院(香川県坂出市)、高知大病院(高知市)(共同通信 影井広美) (2008/04/08)

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