増えるビタミンD欠乏症
多い乳幼児、骨に異常も
食物制限などが影響

 食生活の豊かな現代社会で、乳幼児に潜在的なビタミンD欠乏症が増えているという。ビタミンD欠乏症といえば、貧しかった時代の病気で、骨の変形や成長不全を起こす「くる病」だ。
 「表面的には栄養がよいので分からないが、今の赤ちゃんはビタミンD欠乏症になる境目にいる子が多い。全乳幼児の3割ぐらいがそういう子ではないか」と岡山大大学院の田中弘之・助教授(小児科)は指摘する。
 
 ▽日光でも合成
 ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進する働きを持つが、乳児の場合、母乳だけではビタミンDが不足することが分かっているという。
 母乳は1リットル中にビタミンDを110国際単位含む。栄養学では乳児は1日650mlの母乳を飲むとされ、約70国際単位の摂取となる。
 それを補っているのが、毎日の日光浴。紫外線が皮膚に当たると、そこでコレステロールからビタミンDが合成される。
 「東北地方あたりでも、両手と顔だけ1日10-15分、日に当たればビタミンDの合成には十分とされる」と同助教授。
 通常の日光浴でおおむね必要最低限はカバーできているはずだが、紫外線でどのぐらい合成できるのか、はっきりしていないため、実はビタミンDの適切な所要量が分からないという。

 ▽欠乏状態示す
 問題は最近、乳幼児に多いアトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどにより、日光に当たらなくなったり、離乳食が必要なときに食物制限をしたりして、ビタミンDが欠乏気味になっているケースが少なくないという点だ。
 「この10年、晴天が多い岡山で毎年のように、くる病の乳幼児が見つかる。それ以前の15年ぐらいは全く見たことがなく、もうあり得ないはずの病気なのに、これは大変なこと。すそ野はすごく広いと思う」(同助教授)
 潜在的なビタミンD欠乏症を調べるため、田中助教授は最近、予備調査を開始した。
 岡山大病院のアレルギー外来を訪れた乳幼児のうち、約70人を抽出して調べた結果、体内のビタミンDの指標となる血液中の「25水酸化D」の測定から1歳未満で約40%、1-2歳未満で約30%がビタミンDの欠乏状態の境目にあることが判明。
 さらにアレルギーがなかった子に比べると、アトピー性皮膚炎の子の方が欠乏状態が多い傾向が見られ、人工栄養児と母乳栄養児を比べると、明らかに母乳栄養児の方にビタミンD欠乏傾向が見られたという。

 ▽普通の生活を
 「日本人で完全母乳で育てているのは半数を超える。人工乳の場合、ビタミンDは十分だが、完全母乳で育てるには、皮膚でのビタミンD合成が不可欠」(同助教授)
 乳幼児のビタミンD欠乏症では、骨に異常が起き、まず歩き方がおかしくなるが、乳幼児はもともと0脚なので、親は本当のくる病になるまでは気が付かないという。
 また、母乳のときにビタミンDが不足しても、離乳食で不足分が戻れば骨に異常は残らないため、気が付かないうちに治っている子が多い。しかし、離乳食でうまくいかないと簡単にビタミンD欠乏症になっていく。
 ビタミンDは卵1個の摂取で十分な量が取れるが、卵のアレルギーが多く、卵の制限でビタミンD欠乏が起きるのが一番多いらしい。
 田中助教授は「普通の生活をしていればよいのだが、今のままでは、潜在的ビタミンD欠乏症は確実に増えていきそう。そうならないためには、むやみに食物制限をせず、離乳をちゃんと進め、育児書に書いてある程度の日光浴はすること」とアドバイスしている。


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