遺伝相談で心の支援
重要性増すカウンセラー
就職先、保険適用が課題
  遺伝性の病気を疑う相談者が診断を受ける際に、正確な情報を提供して意思決定ができるようにしたり、心理的なサポートをしたりする遺伝カウンセラーの認定制度ができて3年。カウンセラーの重要性が増す一方で、就職先の確保や保険適用などの課題も浮上している。
 
▽不安解消
 千葉県に住む平間恭子さん(33)は昨年、妊娠し、都内の病院で胎児の遺伝子検査を受けた。長男(4)に遺伝性疾患の福山型筋ジストロフィーによる重い障害があるからだった。
 1回1時間の遺伝カウンセリングを、検査の前に2回、後に1回受けた。担当したのは「認定遺伝カウンセラー」の資格を持つ看護師。胎盤になる細胞を採取する絨毛(じゅうもう)検査に不安を抱いていた平間さんに、流産の危険性や結果が出るまでの流れをていねいに説明した。
 検査の結果、胎児も病気と分かり出産をあきらめたが、平間さんは「同じ女性ということもあり、心理的にとても支えになった」と振り返る。
 カウンセラーの仕事は多岐にわたる。相談者の家族の病歴をまとめ、検査で得られた遺伝情報を家族でどう生かすかや、病気に関する不安、将来の生活設計などの相談に乗る。患者団体などサポートを受けられる組織も紹介する。
 東京女子医大遺伝子医療センター所長で、カウンセラーを目指す研修生を受け入れている斎藤加代子教授は「遺伝に対する差別や偏見を、世の中からなくすことも使命」と話す。
 
▽対等な立場で
 日本では専門医がカウンセリングに当たることが多かったが、2学会が協力して2005年4月、医師ではない人を対象にした認定遺伝カウンセラー制度を始めた。
 「上下関係が生まれがちな医師と違い、相談者と対等な立場で話し合える」と、お茶の水女子大特設遺伝カウンセリングコースの千代豪昭教授は利点を挙げる。
 受験には大学院レベルの専門知識が必要で、千代教授によると京都大など7大学が養成の専門課程を置き、4月には東京女子医大も新設する。07年までの資格取得者は17人にとどまるが、10年後には約400人に増えると予測されている。
 福嶋義光信州大教授(遺伝医学)らの調査では、遺伝子医療部門を設置している大学病院の割合は、03年の40%から、06年には71%に増加。カウンセラーの仕事も増しているはずだが「医療現場では、経営難やカウンセラーが担う役割の理解不足から、就職先が足りない」(千代教授)のが現状という。
 
▽見直しに期待
 相談者にとっては、費用が大きな負担になっている。保険がきかないため、平間さんは3回のカウンセリングで計4万5千円の支出となった。「悩みを抱える人たちが行く場所なので、国から何らかの形で補助が出れば」と漏らす。
 遺伝医療にかかわる関係者でつくり、福嶋教授が代表世話人を務める全国遺伝子医療部門連絡会議は昨年九月「遺伝子検査のガイドラインでカウンセリング実施を求めておきながら、自費診療となるのは、大きな矛盾」として、厚生労働省へ要望書を提出した。
 こうした動きもあり、今年4月からは、検査を受ける月に1回、保険が適用されることになった。ただ、保険適用は医師がカウンセリングに当たった場合に限られており、千代教授は「医師だけがいれば良い時代ではなくなった。患者さんや家族のニーズに応えるべきだ」と見直しに期待を込めた。(共同通信 佐分利幸恵) (2008/03/25)

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