放射線療法の推進、重点に
少ない負担で効果
課題は人材不足
  がんによる死亡者の20%減少などを目指した対策が本格化する。国の基本計画を基に、都道府県の多くが3月末までに「がん対策推進計画」を策定。放射線・化学療法の推進や、治療初期からの緩和ケアの実施、患者・家族の相談支援などが柱となっている。
× × × × × × × × × × ×
 「前立腺がんです。手術では取り残す可能性が高い」。設計事務所を営む兵庫県在住の武内務さん(59)は2004年秋、排尿障害で受診した市立病院で告げられた。
 前立腺がんの治療法には、手術、放射線療法、ホルモン療法などがある。武内さんのがんは、周囲の組織にまで広がる浸潤があり「放射線とホルモンが適当」とされた。「前立腺がんです。手術では取り残す可能性が高い」。設計事務所を営む兵庫県在住の武内務さん(59)は2004年秋、排尿障害で受診した市立病院で告げられた。
 前立腺がんの治療法には、手術、放射線療法、ホルモン療法などがある。武内さんのがんは、周囲の組織にまで広がる浸潤があり「放射線とホルモンが適当」とされた。
 インターネットで探し当てたのが、日本ではその数年前に導入され始めた強度変調放射線治療(IMRT)。ホルモン療法に続き、05年4月から6月まで、京都大病院で1回十数分の治療を39回繰り返した。
 IMRTはエックス線の強度を変えながら多方向から当て、がんを集中的に狙うため、周囲の正常な組織を傷付けにくい。武内さんの治療は順調で、副作用は治療期間の後半に頻尿になった程度。それも治療終了後、数週間で治ったという。
 
▽動体追尾
 放射線療法は、昨年6月の国の「がん対策推進基本計画」で、抗がん剤による化学療法と並んで重点事項に位置付けられた。日本では、もう一つの柱である手術が重視されてきたが、これは「手術が治療の中心である胃がんが多かったため」と東京大病院放射線科の中川恵一准教授は言う。
 胃がんが減り、さまざまな治療法がある乳がんや前立腺がんなどが増えた現在は、化学療法や、負担が少なく「多くのがんで手術と同じくらいの効果が確認されている」(中川准教授)放射線療法の充実が急務だ。
 1月末、先端医療センター(神戸市)と三菱重工業が開発した治療装置が、厚生労働省の製造販売承認を受けた。
 エックス線の照射口に世界初の首振り機構を採用し、病巣を立体的に把握できる2台の透視装置も搭載。呼吸につれて動く患部を追尾し照射する動体追尾の実用化に向け、同センターの小久保雅樹グループリーダーは「乳がんや膵臓(すいぞう)がんのような動きやすい病巣にも、短時間で正確に照射できるようになる」と期待をかける。
 
▽少ない専門家
 こうした社会の需要や技術の進歩に、人材が追いついていないのが現状だ。
 放射線治療装置(リニアック)は国内に800台近くあるのに、日本放射線腫瘍(しゅよう)学会の認定医は約540人。治療計画作りや精度管理に当たる医学物理士は約380人と、さらに少ない。
 2月中旬、放射線療法をテーマに東京で開かれた国際がん研究シンポジウムでも、実態が紹介された。シンポ組織委員長の池田恢(ひろし)・市立堺病院副院長は「日本は中国や韓国にも後れを取っている」と指摘。参加者とともに医学物理士を国家資格にすることなどを求める声明を発表し、環境整備を訴える。
 治療を終え2年8カ月が経過した武内さん。特段の異常もなく「自分では治ったと思っている。インターネットに命を救われた」と話す。
 当初の市立病院でも、別の医師の意見を求め訪れた国立病院でも、放射線療法について詳しく聞けず、「五年後の生存率は2割」と追い打ちをかけるような言われ方もした。結局、紹介された病院には行かず、ネットでIMRTと京大病院にたどり着いた。
 昨年4月のがん対策基本法施行で、医療従事者の対応や意識も変わってきたようだ。しかし武内さんは「無神経な医師は、まだいるのではないか」と懸念している。(共同通信 影井広美) (2008/03/11)

トップページへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2008 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved