|
いつどこで地震が起きてもおかしくない日本列島。大地震が起きれば被災地のダメージは大きく、慢性疾患を抱える災害弱者は特に深刻な影響を受ける。昨年十月の新潟県中越地震で糖尿病患者らの治療に当たった長岡赤十字病院の鴨井久司(かもい・きゅうじ)・糖尿病内分泌代謝センター長は「阪神大震災後、救急医療はかなり進んだが、慢性疾患対策はまだまだ不十分だ」と指摘している。
▽ほとんど持ち出せなかった薬
多くの人は救護所に行けば薬があると期待したが、用意してあったのは風邪薬や消毒薬、抗生物質などだけ。医師の処方せんが必要な慢性疾患薬は全くなかったという。
「医療機関や調剤薬局が機能していたので幸いだったが、もしすべて機能しなくなったらどうなるのだろう」と鴨井センター長。「主治医が処方できない場合は緊急救護班が薬を供給できる体制が必要では」と訴えた。
特に糖尿病患者は、血糖値のコントロールにインスリンを使うことが多いが、鴨井センター長らが実施したアンケートでは「インスリンを持ち出せなかった」という人が約七割。その理由は「地震の揺れで散らばってしまった」「驚いて持ち出すどころではなかった」など。地震後は、持ち出しやすいよう管理を工夫した人が多いという。
▽食料支援にも注意が必要
使用するインスリンの種類でも違いがでた。食事の二、三十分前に注射する「速効型」を使っていた人が多かったが、注射直後に地震が発生したため食事を取れず低血糖になった人がいた。食事の直前に打てばいい「超速効型」を使う人では、こういう例はなかった。インスリンが全く生産されない人は、二十四時間効果が続く「持効型」の使用が望ましいという。
食糧支援も糖尿病患者には注意が必要。健康な人を対象とした食糧は高カロリーで塩分も多い。高齢者の中には「残すのはもったいない」とがまんして食べ、血糖値が悪化したり、高血圧になった人もいたという。
大地震の後には合併症を悪化させて、脳卒中で亡くなる人もいる。「予防には早朝の血圧管理が重要。避難所などでも朝の血圧を測る必要がある」と鴨井センター長は話している。
|