寝たきり予防に大きな効果
血管の〝硬さ〟測定で
長野市大岡診療所

  脳出血や脳梗塞(こうそく)などの脳卒中は日本人の寝たきり原因の約四割を占め、医療、介護費を圧迫する大きな問題になっている。住民の四割強が65歳以上という長野市大岡地区(旧大岡村)の大岡診療所は、血管の硬さを簡単に測ることができる検査装置を住民の血圧管理に活用、脳卒中による寝たきり防止に大きな成果を挙げている。
 ▽脈波速度を測定
 この装置はコーリンメディカルテクノロジー(愛知県小牧市)が開発した動脈硬化検査装置「form(フォルム)」。
 心臓が打つ「ドックン、ドックン」というリズムは血管の中を「脈波」として伝わる。脈波の伝わる速度(PWV)は血管壁が軟らかいと吸収されて遅くなり、硬いと速くなる。この原理を利用して血管の硬さを測る。
 患者はまず、服のまま待合室のベッドに横になり、両上腕と両足首に血圧測定と同じカフを巻く。胸にも心音センサーなどを付けると数分で測定終了。診察時には、血圧やPWVなどが過去の測定結果とともにグラフ化して印刷されている。
 測定ごとに血圧は変動し、血圧が高いとPWVも速くなるが、両者をグラフにすれば、血管が標準より硬いかどうかは一目瞭然(りょうぜん)だ。
 内場廉(うちば・きよし)所長は「診療所に来た人全員を検査している。血圧が高いだけでは服薬を嫌がる人も多いが『血管が硬い』と言うと納得してもらいやすい。この五年間、診療所で診ている人から高血圧性の脳内出血やくも膜下出血は一人も出ていない」と胸を張る。
 ▽血管が若返る人も
 血管の硬さを簡単に測れるようになると、これまで分からなかった興味深い症例も出てきた。降圧治療を続けると、数は少ないが血管が若返ったのではないかと思える患者がいるという。
 47歳の男性は血管の硬さが70代相当だったが、降圧治療を3年間続けたところ、血管が少しずつ軟らかくなり50代相当になった。
  76歳の高血圧の女性も血管が年齢より硬かったが、治療で適切な血圧に下げて維持すると血管が60代相当に軟らかくなった。
「長年かかって硬く変化した血管が簡単に軟らかくなるとは考えにくいが、血管の機能が少し改善しているのかもしれない」と内場所長。「PWV検査は患者の細かな変化をとらえられる上、薬の効果を評価できる可能性もある」と評価する。
 ▽健診にも有用
 生活習慣病のメタボリック症候群で問題になる高脂血症や高血圧、糖尿病は、いずれも血管に障害を与える。だが重症化するまで全く症状が出ないため、気付かないうちに血管に障害を起こし、確実に進行する。
 このため「PWV検査はメタボリック症候群を効率よく評価するのにも役立つ。健康診断の意義はがんなどを探すことからメタボリック症候群の評価に変わりつつあり、健診にも非常に有用な検査だと思う」という。
 コーリンメディカルテクノロジーによると、formは既に全国約7000の病院、開業医に導入されており、人間ドックで利用している施設もある。日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインなどでも優れた検査法として認知された。
 「人は血管とともに老いるという言葉があるが、血圧を適切にコントロールすれば血管の老化をある程度遅くできる。年を取っても寝たきりにならないためには、血管の硬さを知り、できる限り早く予防を始めることが大切だ」。内場所長はこう話している。


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