|
病院、医学施設の委員会 質向上にネットワーク |
|
病院や研究施設に設置され、医学研究の倫理面の妥当性や安全性を判断する研究倫理審査委員会(IRB)の中には、病院長が委員長を務めるなど問題のある委員会があるとする調査結果を、笹栗俊之九州大教授(臨床薬理学)がまとめた。笹栗教授らは「審査の基準、方法はばらばらで、質が保証されていない」として、IRBのネットワークをつくり、質の向上を目指した取り組みを始めた。 ▽第3者の目
病気の治療を受ける人を対象に、治療法の違いを比べて有効性を分析するなどの方法は、医学研究では欠かせない。だが、薬の効果を調べるために、一部の人にプラセボ(模擬薬)を投与する場合の妥当性など、倫理性が問題になる場合がある。それを第3者が審査するのがIRBだ。 審査の規定として、新薬の安全性や有効性を確かめる治験にはGCPという厚生労働省令の基準、一般の臨床研究には厚労省の倫理指針がある。法的拘束力があるのはGCPだけで、大学などで数多く行われる一般の臨床研究には、倫理審査が義務づけられているとは言えない状況だ。 ▽29%が違反
笹栗教授は九州大病院の臨床試験審査委員会の委員長を務めており、IRBの実情を把握するため、福岡県をモデル地区として県内の病院と医学研究施設計約500を調査した。173のIRBがあることが分かり、大学院生らが委員長らに面談、163のIRBから回答を得て、うち137について分析した。明らかになった問題の一つは、IRBのメンバー構成。治験でGCPは「実施機関の長などは審議や採決に参加することができない」と明確に禁止し、臨床研究の指針にも同様の規定がある。しかし、調査の結果、約29%の委員会では施設長が委員になっており、このうち約70%では委員長を務めていた。 施設長がメンバーから外れるのは、IRBが施設長から諮問されて第3者として審査に当たる立場のためだが、それが理解されていないのではないか、と笹栗教授は言う。 また、審査対象となる研究が申請されていない可能性がある、と約16%のIRBが答えた。 ▽教育、研修を
IRBからは、委員に教育研修の機会があった方がよいとの回答が約81%に上った。プラセボ使用の適切性や、研究対象者にほとんど利益のない研究の可否について、判断が難しいと感じるとの回答も多く、さまざまな課題を抱えている実態が浮き彫りになった。そこで笹栗教授が呼び掛け、福岡県内を中心に約百のIRBが参加してネットワーク「レックネット福岡」を結成した。IRBの委員や事務局担当者らを対象に、年に2回講習会を開くほか、それぞれで自習するための資料類をホームページに掲載する。 笹栗教授は「すべての研究に倫理審査を義務付けるべきだが、今のIRBでは、委員は自分の道徳観だけを頼りに判断するしかない。審査の質を確保するには、教育、研修を受ける機会が必要だ」と指摘している。 ネットワークには全国どこのIRBも参加でき、ホームページで登録を受け付けている。(共同通信 美浦敬) (2008/02/19) +font> |