強度変調治療、保険適用へ
腫瘍の形に合わせ放射線
前立腺や頭頸部がんに
  強弱をつけた放射線ビームを多方向から照射する強度変調放射線治療(IMRT)が、前立腺がんや頭頸部(けいぶ)がんを中心に普及しつつある。腫瘍(しゅよう)の形に合うように照射するため、周囲の正常な臓器や組織への悪影響が少ないのが利点。4月からは健康保険が適用される見通しだ。
 
▽3ミリ幅
 昨年2月、京都大病院で最新型の照射装置が稼働を始めた。最大の特徴は、照射口にありビームの精度や強弱を決めるマルチリーフコリメーターが改善され、照射精度が病巣部分で3ミリ幅へと向上したこと。
 「従来は5ミリ―1センチ幅と粗く、脳腫瘍には使いにくかった」と、1月15日まで京大病院放射線治療科准教授だった永田靖・広島大病院放射線治療部教授は説明する。
 マルチリーフコリメーターは、放射線を遮る何枚もの細い鉛の板が両側から出て照射口の形を刻々と変えることで、病巣とそうでない部分に当たるビームの強さを調整。多方向から照射して、最終的に放射線量が腫瘍には十分に、正常組織には最小限になる仕組みだ。
 前立腺がんの場合、うつぶせに寝た患者に対し、斜め下も含め7方向から40秒ずつ照射する。1回の治療は15―20分で済み、週5回、計30回が標準となる。
 病巣部分の線量は1回2グレイで計74―78グレイ。「従来の放射線治療ではビームの強さが均一なので、正常組織への悪影響を避けるため66―70グレイが限界だった。IMRTで、病巣にしっかり放射線がかけられるようになった」と永田教授。
 さらに、赤外線やエックス線で患者の体のずれを検知し、自動的に照射を修正できるようにもなった。
 
▽副作用減る
 IMRTの対象となるのは、前立腺がん、頭頸部がん、脳腫瘍などで、まとまった成績が報告されているのは前立腺と頭頸部に限られている。
 京大病院では最新型も含め五台の装置を使い、1日約20人に照射。2000年のIMRT導入からこれまでに約400人が治療を受けた。
 治療成績は「10年たたないと正確には出ない」と永田教授は慎重だが、通常の放射線治療に比べ副作用は「前立腺がん患者の直腸からの出血は半減し、頭頸部がんでは口の渇きやのどの痛みが減るなど、明らかに改善している」と言う。
 この治療を希望する患者は多く、前立腺がんはホルモン治療で進行を抑えながら約半年待ちの状態。早期の治療開始が必要な頭頸部がんでは、通常2、3週間以内に治療を始められるようにしているという。
 厚生労働省によると、保険が一部適用される先進医療として実施が認められている医療機関は、京大病院など21施設(1月4日現在)。京大病院の場合、治療費は約77万円という。1月23日の中央社会保険医療協議会で保険導入が適切と承認され、四月からIMRTは保険診療となる見通しになった。
 
▽人材や体制を
 腫瘍の形は患者によって違うため、IMRTでは事前の入念な準備が必要となる。
 最も重要なのは、照射の角度や量を決める治療計画で「現在は最短2、3時間でできるが、当初は手探りで数日がかりだった」(永田教授)。計画を基に、医学物理士が模型に照射し線量計で確認するなどの精度管理も欠かせない。
 米国では、がん患者の60%以上に放射線治療が行われているが、日本では約25%。永田教授は「今後、副作用の少ない放射線治療の需要は増える」と話し、人材育成や研修体制整備の重要性を訴えている。(共同通信 影井広美)(2008/02/05)

トップページへ戻る

記事、写真、グラフィックスの無断転載を禁じます。
2008 Kyodo News (c) Established 1945 All Rights Reserved