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骨折や良性腫瘍(しゅよう)の切除などでできた骨の欠損部を補うために、さまざまな人工骨が開発されている。大阪大病院整形外科の吉川秀樹教授らが開発した「ネオボーン」は、骨の再生を補助する効果がある医療用具として国が唯一承認した人工骨で、医療現場で急速に普及しつつある。
▽骨と一体化
ネオボーンは骨や歯の主成分であるハイドロキシアパタイト(HA)が材料。HAを使った人工骨はほかにもあるが、これは軽石のように、内部が直径150?㍍の微小な空洞で満たされ、しかもすべての空洞が平均40?㍍の穴でつながっている特殊な構造がポイントだ。
「移植すると、穴を通って周辺から正常な骨や血管の細胞が入り込む。最終的には骨が形成され、患者の骨と一体化する」。吉川教授はきめの細かい角砂糖のようなネオボーンを手にこう話す。
骨の欠損部を埋める場合、1990年代までは患者自身の骨盤を削って移植する方法が主流だった。しかしこの場合、痛みや血腫などの合併症を引き起こす危険性が3割ほどある。
さらに骨粗しょう症の患者では、骨盤の骨自体がもろいため移植用に使えないことが多く、安全で強い人工骨の開発が求められてきた。
▽強度3倍に
人工骨にはこれまで、内部につながった穴を持たないHAや天然のサンゴなどが使われてきたが、生体組織との親和性や強度の点で難があった。例えば、従来のHAによる人工骨は内部まで骨が再生しないために、移植部分で再骨折することがしばしばあったという。
ネオボーンは特殊な構造を採用することで欠点を解消。中に入り込んだ細胞が骨を形成するため、ウサギの実験では移植後9週間で強度が3倍になることが確認されている。
吉川教授はこれまでに2歳から88歳までの骨折や骨腫瘍、関節リウマチ、骨粗しょう症、変形性関節症の患者200人以上に使用し、3カ月から半年で骨が再生するなど、良好な治療効果が得られているという。何より「大阪大病院では患者さんの健康な骨盤を削り取る手術はほとんどなくなった」と吉川教授。
ネオボーンは加工が容易なため、オーダーメードで欠損部の形に合わせて加工し、はめ込むことができる。病気などでできた空洞を細かい顆粒(かりゅう)で埋める使用法も可能だ。
価格は1㌘当たり7千―1万円と、ほかの人工骨並み。保険適用の対象にもなっている。
▽術後トラブルなし
移植したネオボーンの吸収は遅く、5年から10年は体内に残るが、骨と同じ成分のため害はない。吉川教授は「骨粗しょう症などの患者さんにとっては、もろい自分の骨で置き換わらない方が、むしろ治療効果がある」と話している。
ネオボーンを販売する医療器具製造販売会社「エム・エム・ティー」(大阪市中央区)は「2003年9月の販売開始以来、売り上げは毎年、倍増している。術後のトラブルや感染例の報告も一切ない」と話す。
吉川教授はより大きな骨の欠損部に適用するため、骨に成長する幹細胞を患者の骨髄から採取してネオボーンに注入、培養して移植する臨床研究を、同病院未来医療センターで04年に開始。骨の形成が早まるかどうかを検証している。
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