治療法増えたパーキンソン
薬、手術、電気刺激
遺伝子導入の臨床研究も
  緩慢な動作、筋肉のこわばり、震え、傾いた体の姿勢を立て直す重心移動などの運動機能の障害―。神経伝達物質ドーパミンの不足で起きるパーキンソン病は、日本でも急速に患者が増え、人口10万人当たり100人以上とみられる。
 根本的な治療はまだないが、ドーパミンの原料を補ったり、脳深部を電気刺激したりするほか、ドーパミン補充効果を延長する新薬の使用や、遺伝子治療の臨床研究も始まるなど、症状を抑える選択肢は増えてきた。
 
▽2割に減ると発症
 「脳のドーパミン量のピークは20歳ごろ。その後、だんだんと減り、ピーク時の2割になるとパーキンソンの症状が出る」と藤本健一自治医大准教授(神経内科)。2割になるのは正常な人では100歳程度だが、パーキンソン病の患者ではもっと早い。
 パーキンソン病の治療は「薬物治療が基本」(藤本准教授)。ドーパミンを直接投与しても、血液中の物質が脳に行かないよう監視する「血液脳関門」で遮られるが、前駆体のLドーパの投与で症状が改善することが分かり、1970年代以降は薬が中心になった。
 Lドーパを飲み続けていると、効く時間が短くなっていく。効果を期待して過剰に飲むと、体が勝手に動く「ジスキネジア」という不随意運動が起きやすい。そこで80年代以降、そうした副作用の少ないドーパミンアゴニストという薬が登場した。現在日本では6種類あり、特に若い患者には治療の中心になっている。
 こうした治療薬には、幻覚、妄想などの精神症状が起きる場合がある。認知症を合併している高齢者などに出やすく「薬の使い方に工夫が必要だ」と藤本准教授は指摘する。
 
▽長時間作用
 脳の手術は、薬が開発される前の50―60年代に盛んに行われた。震えの改善には視床、筋肉のこわばりには淡蒼球(たんそうきゅう)など、改善を目指す症状ごとに、治療対象の場所が分かれており、その部位を壊すと症状は良くなる。
 日本では2000年から、脳の深部を電気で刺激することで手術と同様の効果があるDBSという方法が保険適用となった。視床下核という部分が最も有効で、薬が減らせるので精神症状が改善する場合もあるという。
 07年は、新薬が登場、新しい臨床研究も始まった年となった。
 4月に発売されたのは、Lドーパと併用する「COMT阻害薬」。Lドーパはドーパミンになるまでに酵素によって分解されてしまい、脳に到達して働くのはわずか。分解酵素の機能を抑え、Lドーパが効く時間を長くする狙いだ。藤本准教授は「患者によっては、効く時間が2倍になった」と言う。
 
▽高い関心
 自治医大は07年5月、遺伝子治療の臨床研究を始めた。通常ドーパミンをつくる脳の黒質という部分に代わり、線条体の細胞にドーパミン合成にかかわる酵素の遺伝子を導入、ここでLドーパからドーパミンを作らせようという計画だ。
 ほかの治療が効かない患者が対象。2人目では脳にわずかな出血があった。遺伝子導入時の外科的な手技が原因とみられ、間もなく改善した。
 「病気の原因となる遺伝子の異常を修復するのではなく、狙った場所に薬を送るドラッグデリバリーシステムに近い。しかし将来、遺伝子治療によって煩雑な服薬から解放されれば、その福音は極めて大きい」と藤本准教授。患者らの関心は高く、毎月開催している説明会には大勢の患者が訪れるという。(共同通信 美浦敬)(2008/01/08)

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